優しく歌うほうが怖い
カップリングには、〈これぞ降幡愛!〉と言うべき80s感が全開の2曲が収められている。“サンセットに忍ばせて”は、軽快なギター・カッティング、しなやかにグルーヴするシンセベース、煌びやかなシンセなどが絶妙なバランスで配置されたポップ・チューン。恋愛の終わりと夕暮れの情景を重ねた歌詞にも、彼女の個性が滲み出ている。
「“サンセットに忍ばせて”は、イントロが始まった瞬間に〈好き!〉という感じでした。もともとの自分のコンセプトである80sの雰囲気がすごくあるし、純粋にいい曲だなって。歌詞は自分から〈さよなら〉を告げて、関係を断ち切ろうとする女性像を描いてます。これまでは〈いかないで〉みたいな別れの曲が多かったんですけど、この曲の主人公はかなり怒ってますね(笑)。レコーディングも、最初はちょっと強気な感じで歌ってたんですよ。でも本間さんから〈優しく歌ったほうが、もっと怖いんじゃない?〉と言われて。結果的に、今まででいちばん優しく歌ってますね」。
もう1曲の“ネオ・イルミネーション”は、フィル・スペクター~大瀧詠一を想起させる華やかで厚みのあるサウンドメイク、祝祭的なムードが溢れ出す旋律が一つになった、降幡愛にとって初のクリスマス・ソングだ。〈幸せな今を感じ合うから/朝までには元の関係〉という意味深なリリックも彼女らしい。
「去年の12月にリリースした『メイクアップ』に“真冬のシアーマインド”というウインター・ソングが入っていたので、〈今回はどうなるのかな?〉と思っていたんですけど、J-Popの王道と本間さんらしさが合わさって、素敵な曲になりました。小さいときから竹内まりやさんのクリスマス・ソングなども聴いてきたし、私もいつか作りたいなと思ってたんですよね。歌詞に関しては……クリスマスを一緒に過ごすのは、恋人だけじゃないですから(笑)。恋人同士の楽しいクリスマス・ソングは私じゃなくても書けると思うし、やっぱりこういう歌詞が好きなんですよね」。
この秋に行われた2度目の全国ツアーに続き、2022年2月にはBillboard Live TOKYOでスペシャル・ライヴ〈Ai Furihata “Trip to STAR”〉を開催。アーティスト・デビューから1年以上が経過し、その活動はさらに充実していきそうだ。
「2月のライヴは誕生日の前日と当日(2月19日)で、そんな特別な日に応援してくださる皆さんと会えるって、すごいことだなって。声優の活動だけでは経験できないことばかりだし、本当にありがたいです。もう、次の作品の制作もやってるんですよ。皆さんがビックリするような活動も準備しているので、楽しみにしてほしいですね」。
表現する側としてだけでなく、ディープな音楽ファンとしても知られる彼女。最近はアジアのポップ・シーンが気になっているとか。
「タイや中国など、今どきのアジア圏のシティー・ポップに興味があって。韓国のADOYも好きです。過去の音楽へのリスペクトを感じるし、ヴィジュアルやアートワークもカッコ良くて、参考にさせてもらってます(笑)。もちろん80年代の音楽も聴いてます。ラジオ番組(bayfmのレギュラー・ラジオ番組「降幡 愛のBecause of you」)を通して教わることも多いんですよ。まだまだ無知な私ですが、リスナーの皆さんと一緒に勉強していきたいなって。サブスクで気軽に聴けるのもいいけど、便利になればなるほど〈やっぱり盤で聴くのがいいな〉と改めて感じてますね、最近は」。
降幡愛の作品。
左から、2020年作『Moonrise』『メイクアップ』、2020年のシングル“ハネムーン”(すべてPurple One Star)