2015年より〈ルワン〉という名でVOCALOID楽曲を制作していた、ボカロPを皆さんはご存知だろうか。各動画サイトの関連動画サイト総再生回数は1000万再生を越え、自身の楽曲だけでなく、他アーティストへの楽曲提供やギターアレンジも行ってきた〈ルワン〉が、2021年12月3日に遼遼(ハルカリョウ)と名前を変え、“モンタージュ”という楽曲を引っ提げてアーティストデビューを果たす。

今回はそんな彼の歩んできた軌跡にフォーカスし、活動形態の変化や音楽性について紐解いていこうと思う。この記事が、遼遼を知る最初のキッカケになれば幸いだ。

遼遼 『モンタージュ』 Ryo Haruka(2021)

洋楽ロック、RADWIMPS、そしてVOCALOID

遼遼の最新楽曲“モンタージュ”の魅力に迫る前に、まず彼がこれまで歩んできた音楽キャリアのルーツから辿っていこうと思う。遼遼が音楽に興味を持ったのは、〈キング・オブ・ポップ〉と評されるマイケル・ジャクソンの訃報を知ったことから。当時父親には〈お前もついに洋楽を聴けるようになったんだな〉と車の中で洋楽を聴かされ続けるという日々が始まったという。そこで興味を持ったのが、ニルヴァーナやビートルズ、クイーン、エアロスミスなど往年のロックシーンを牽引してきたバンドである。そこから中学時代は、いじめなどの問題から学校へ行けないことが続き、インターネットで音楽を探る日々。そんな中で出会ったのが、RADWIMPSの2006年の楽曲“有心論”。この曲は遼遼の後々の活動、特に作詞の面で大きな影響を与えたという。RADWIMPSと“有心論”がキッカケでギターを購入した彼は、作曲よりも先に作詞に興味を持ち、ブログなどに自作したリリックを投稿するようになった。彼の創作活動の原点はこのタイミングと言っても過言ではないだろう。

同じ頃、〈ルワン〉として活動をスタートするキッカケとなるVOCALOIDに出会うことになる。実は彼とVOCALOIDとの出会いも、洋楽との出会いのように〈曲を聴かされ続ける〉という行動がカギになってくるのだが、友人にryo(supercell)の“メルト”を1時間聴かされ続けたことで、VOCALOIDの存在を認識したという。当時は〈人間でない声は受け付けられない〉と思った彼だが、そこからsupercellの“君の知らない物語”などを聴き進めていくうちに、徐々にボカロに傾倒するようになる。その熱中ぶりは高校受験1週間前にもかかわらず、PCの前に張り付いて延々とn-bunaの“透明エレジー”を聴き続けるほどで、これらのエピソードから彼がどれだけボカロにハマっていったかが分かるだろう。