2024年も残りあとわずか。今年の音楽シーンの作品や出来事を振り返っているリスナーも多いのではないでしょうか? 今回はMikikiの年末企画として、2024年の洋楽のヒット曲のなかでも特に大きな話題を呼んだケンドリック・ラマー“Not Like Us”の解説をお届けします。 *Mikiki編集部
事件頻発で混沌としていた2024年のヒップホップ
2024年の音楽シーン、とりわけヒップホップシーンは例年以上に混沌としていた。優れた作品は少なくなかったが、それ以上にポジティブとネガティブの両面で大きな事件が頻発したし、曲や作品よりもその事実に注目が集まった。それらが音楽自体の評価や検討に繋がったのかというと微妙であるのが、少々残念ではあるものの……。
例えば米NBCニュースのまとめ記事を参照してみると、ミーガン・ザ・スタリオンVS.ニッキー・ミナージュのビーフ、シャブージーがカントリーとヒップホップの間の壁を破ったこと、パリ2024オリンピックでブレイキンが競技種目に採用されたこと、ディディことショーン・コムズの性犯罪による逮捕、ヤング・サグが有罪を認め裁判が終了したこと、黒人女性アーティストの商業面での圧勝などが列記されている。
とはいえ何よりも大きかったのは、ケンドリック・ラマーVS.ドレイクのビーフと“Not Like Us”の大ヒットであることは間違いない。ビーフについて経緯の詳細は市川タツキによるコラムにまとめられているので、まずはそちらを読んでほしい。
その後、ヒップホップシーン全体を巻き込んだ大抗争はほとんど終結したと言えるが、記事を掲載した5月13日以降のケンドリックの動きも簡単に整理しておこう。ケンドリックは、ジューンティーンス(奴隷解放記念日)の6月19日に〈The Pop Out: Ken & Friends〉という一回限りのライブをサプライズ開催、代表曲や一連のディストラックを仲間とパフォーマンスし、この公演はAmazon Musicが生配信もおこなった。そして独立記念日の7月4日には“Not Like Us”のミュージックビデオを発表、9月8日に第59回スーパーボウルのハーフタイムショーをケンドリックが務めることがアナウンスされ、3日後の9月11日に新曲“Watch The Party Die”をInstagramに投稿した。さらに、ビーフへ言及した曲を含むニューアルバム『GNX』を11月22日にサプライズリリースしている。一方のドレイクは11月25日、“Not Like Us”の再生数を増やす違法行為をおこなったとしてユニバーサル・ミュージック・グループとSpotifyを訴えた。