細野晴臣から連なる〈生命〉をテーマにした日本音楽の文脈
――以前の体制時はもっと打ち込み色が強いサウンドだったと思いますが、バンドになってからは音も変わりました。
足立「今まではライブではパソコンを使ってて生演奏ではなかったんですけど、今はライブで再現できる曲を考えていて、前の反動で生演奏のライブってすごく楽しいなって思ってます」
――レコーディングはいつしたんですか?
足立「今年の2月ですね。とにかく音源を早く作らないと、と思って。夏くらいには出す予定だったんですけど、いろいろいじくったりして結局時間はかかってしまいました」
――連載〈Mikikiの歌謡日〉でテンテンコさんに提供した“アロエ・ベラ”を取り上げた際、〈ドロッと溶けて落ちていくようなサビの美しさ〉と書いたんですが、今作でもそういう部分はあるように思います。あるいは、気持ちの良い鬱さ加減とか、メランコリーさとか。そういう音像は意識してますか?
足立「性格が基本的に根暗だからですかね(笑)。一人が好きだし、パリピになれないし、そういう部分をキレイな音で出すことへの憧れがあるのかもしれないです」
――でも、聴いていてすごく美しくて、カラフルでキラキラしていて、本当に根暗な人だったらもっと暗い音楽になると思うんですよ。
足立「人生の暗さとか憂鬱さの先に救いがある……ってことなのかなあ(笑)」
――それと、EMERALD FOURの歌詞には死生観が漂っているように思います。〈心中〉をテーマにした“僕らの失敗”とか、〈公園で死んだことに気づかない地縛霊の男〉がテーマの“霧の公園”、〈生まれ変わり〉がテーマの“さよなら”といった具合に。そういう意識はありますか?
足立「そういうものは人生のテーマとしてあって、それと自分の音楽を組み合わせたらああいう形になるんだと思います。例えば細野(晴臣)さんにもニューエイジ的な作品の時期ってありますけど、ああいった〈生命〉をテーマにした日本の音楽の文脈に自分たちも位置できないかなと思うこともありました。チャクラの板倉文さんとか、オオルタイチさんみたいな、ああいう文脈を受け継げたらなと思っています。
そういう世界観とか価値観はすごく強く自分の中にあって、昔は〈死んだらどうなるんだろう?〉とか〈生まれ変わりはあるのかな?〉など、そんなことばかり考えていました」
――メンバーは足立さんのこの世界観をどう捉えているんでしょう。
ぱる「足立さんって面白いな~って(笑)。私は考えたこともなかったので。だから足立さんの世界観をちゃんと歌えてるか心配ですよ」
足立「大丈夫ですよ(笑)」
ぱる「歌詞の意味は考えて歌うようにはしています」
――ぱるさんは歌詞からどういう意味を受け取ってますか?
ぱる「うーん、現世への諦め(笑)? いや、諦めてはいないんですよ。そうは言ってるけど内心は思ってない、みたいな」
足立「以前仏教の本を読んでた時期があって、うろ覚えですが、〈結局、人間の幸福や不幸は、自分の捉え方次第で、外的要因ではなくて内的なあり方が大事だ〉みたいな事が書かれてあって、人生で起こることはコントロールできないけど、自分のあり方はコントロールできる、みたいなことを歌詞に込めれたらと思っていました」
――そういう世界観は音にも表れている気がします。リバーブのかかり方とか、キーボードのキラキラした雰囲気とかは、現世じゃないような、天国みたいな感じがします。
足立「現実とは違った世界の狭間みたいなものに憧れる気持ちがあるのかなと思います。だからどうしてもリバーブは増し増しになっちゃいますし、音も柔らかい音が好きです。」
ハイジ「音色のことはよく相談しますね。私もなかなかどの音が一番曲に合うか分からないし、機械に弱いので(笑)、二人で特訓したりしました」
足立「なかなか上音の整理は難しくて」
ハイジ「でもそのおかげで良くなったと思います」