
2020年6月に設立されたポニーキャニオンのレーベル、IRORI Records。現在所属しているのはOfficial髭男dism、Kroi、TOMOO、go!go!vanillas、Bialystocks、a子、スカート、Homecomings、SOMETIME’S、そしてS.A.R.。マネージメントやライブを含めて、アーティストと音楽を360°で取り扱っている組織だ。
IRORIの立ち上げの際に掲げられたのは〈昨今、音楽を楽しむ環境がより身近になったことで、急速に流行が変化する音楽シーン中、才能豊かなアーティストと共に、色褪せない音楽を追求し、音楽が持つ本質を的確に多くのリスナーへ発信するべく〉という言葉。メジャーの領域で特異な美学、そこに込めた意志を常に貫きながら、IRORIは優れた音楽を世に広く届けてきた。
そんなIRORIが設立から5周年を迎えたことを機に、タワーレコードとタッグを組んで〈IRORI Records 5th Anniversary Fair〉を開催している。そこで今回、発起人でありレーベル長の守谷和真に話を聞くことができた。所属アーティストたちとともに歩んできた守谷の言葉は、柔らかく朗らかでありながらも音楽への愛と熱意に満ちている。
※このインタビューは2025年8月1日(金)発行の「TOWER PLUS+ IRORI BOOK」に掲載される記事の拡大版です

10年、20年後に聴いても色褪せない音楽
――IRORI Recordsの立ち上げ時の状況を改めて教えてください。
「サブスクが世の中に浸透したタイミングで、さらにコロナ禍に入った時期でもありました。音楽シーンでは、バズが如実にチャートへ反映されることが増えた頃でもありましたね。
瞬間的なバズで音楽が世の中に浸透するのも素晴らしいことだとは思いつつ、僕らは長く価値を保てる音楽、10年、20年後に聴いても色褪せない音楽をしっかり作り込みたいと考えていたんです。アーティストの活動や規模感についても長く活動できる環境作りを心がけて、才能あるアーティストに所属してもらい、作品をリリースしていこう、というスタンスを貫いています」
――そういった美学はスタッフのみなさんを含めて共有していることですか?
「言葉で直接伝えることはあまりありませんが、僕らはアーティストに育てられる立場でもあるので、アーティストがそういった考え方を持っていれば、それがスタッフにも伝わりますし、レーベルの方向性はうまく共有できていると思います。わかりやすいヒットに貪欲な部分もあるとはいえ、最初から掲げてきた信念やコンセプトはブレないようにしてきたので、そこは保てていると実感しています」
――立ち上げ時に所属していたアーティストはOfficial髭男dismとスカートでしたね。
「なかなか異色な組み合わせの2組でした(笑)」
――それ以降、所属アーティストの数も作品数も増え、レーベルの個性や色は確立されてきたと感じますか?
「そのジャンルのトップランカーや唯一無二なアーティスト、自分たちの心に響く音楽を作るミュージシャンに所属してもらってきたので、ジャンルはバラバラですが、共通項はなにかしらあるんじゃないかなと思います。一つはルーツが洋楽にあるアーティストたちということで、そういった自分たちの好きな音楽を貫きながら、日本でどうやって多くの人に聴いてもらえるかという点で、みんなが悪戦苦闘しているレーベルなのかなと」
――ちなみに、守谷さんが理想やロールモデルとするレーベルってありますか?
「イギリスの音楽が好きなので、ダーティ・ヒットやドミノは憧れのレーベルですね。ラフ・トレードのような長く続いているレーベルも大好きですし、あんなレーベルが日本にあったらいいな、なんて思います。なかなかハードルが高いとは思うんですけど(笑)」