【前列左から】蒼井輝菜(2002年4月26日生:オレンジ)、増田葵奈(2003年2月14日生:パープル)、杏優(2002年7月11日生:ホワイト)
アイドルの本懐たるライヴのフィールドで新たな状況を構築する野心的な6人組。ニュー・シングルを引っ提げて急成長する注目グループの現在と未来に迫る!
新時代を作っていこうね
世界が大きく揺れ動き、誰もが〈状況の変化〉を余儀なくされた現代。音楽業界においても、創作活動やライヴの在り方といった点で計り知れないほどの影響があったわけだが、そんな逆風吹きすさぶ新時代の最中、2020年11月に結成されたのが、西野愛望、羽柴愛実、増田葵奈、小川すず、蒼井輝菜、杏優の6人から成るアイドル・ユニット、situasion(シチュアシオン)だ。
羽柴愛実「私たちのコンセプトは〈新しい状況を構築する〉というもので、楽曲の中でいろいろな状況になるんですよ。例えば、ストーカーになったり、死んでしまったり、奥さんに先立たれてしまった旦那さんの気持ちになったり。そういう普通はすることのない体験を、自分たちが表現するんです」
西野愛望「同じライヴがないのが私たちのウリで、同じ曲をやっても、お客さんの感想や評価が毎回違うんです。ステージ上で歌ったり踊ったりしていないときは、すぐへにょへにょになっちゃうんですけど(笑)」
小川すず「でもライヴはやっていて楽しいです」
結成から間もない2020年12月に初ライヴを開催して以来、ほぼ毎週のようにステージに立ってきた彼女たち。元日早朝の〈HATSUHINODE〉で幕を開けた2021年1月には初のアルバム『debutante』をリリース、その後も配信を中心に次々と新曲を発表して、結成からここまでの1年、ひとときも止まることなく走り続けてきた。
増田葵奈「2020年の年末に、大晦日と元旦に年越しを跨いで2回ライヴをやったんですけど、その夜、泊まっていたホテルでみんなで牛丼を食べながら大事な話をしたんです(笑)。自分たちのいまの気持ち、これからめざしていきたいところ、いろんなことを話し合って。そこで〈このメンバーでがんばるぞ!〉っていう気持ちがさらに強くなって、この1年をがんばれました」
愛望「そのときに、みんなで半分泣きながら、〈新時代を作っていこうね〉って、約束みたいなことをしたんです」
杏優「この1年間は本当にあっという間で。私は6月浅草花劇場でやった初めてのワンマン〈situasion 1st Oneman LIve 「KAWARA GIRLS」〉が、前座に落語があったり、プロデューサーさんが手をかけていろいろ考えてくれたので、特に思い出に残っています」
蒼井輝菜「それまで浅草花劇場みたいに大きな会場でライヴをやったことがなかったし、(ファンが)メンバー一人ずつの横断幕も出してくれて、〈自分が有名人みたいになってる!〉ってすごく感激しました」
愛望「ワンマンや生誕祭も印象深いですけど、私は大阪遠征でライヴを観てから憧れていたアイドルさんと、そこから半年も経たないうちに対バンできたことがすごく嬉しくて。最初の頃はイヴェントに出演してもトップバッターが当たり前だったんですけど、結果を残したら出演順もだんだん後ろになって。大きなイヴェントでトリになれたときは〈シチュすごいな〉って思いました」
ヤバさを更新した

そのように勢いを増すなかで届いたのが、4曲入りのニュー・シングル“I would prefer not to”だ。これまでも、変拍子ポスト・ロック直系の“BLOOP”といったライヴでも人気の楽曲が並ぶ『debutante』、EDMと和テイストの融合にキング・クリムゾンへのオマージュを忍ばせた“JAPANESE HORROR STORY”収録の配信EP『KAWARA GIRLS』など、一筋縄ではいかない作品によって支持を広げてきたsituasionだが、今作では〈生と死〉をテーマに掲げ、さらにディープな世界に踏み込んでいる。
愛実「“JAPANESE HORROR STORY”がファンの人たちからいちばんヤバいと言われる曲なんですけど、今回のシングルでそのヤバさを更新したと思います」
杏優「“I would prefer not to”はエモい感じですけど、他の曲はいい意味で気持ち悪くて、そういうところは今回もsituasionらしいなって思いました」
輝菜「今回は新しい試みもあって、歌わない曲があるんですよ」
〈胎児〉〈胎芽〉を意味するそのインスト曲“embryo”で産声を上げる本作。続く“闇に関する報告書”では歪んだギターが支配するダークな音響のなかで、6人の感情希薄な歌声が悪夢めいた音世界を演出。さらにサイケ・トランス調のトラックに乗せて〈らんらんらんらん〉という無邪気なフレーズがリフレインされる“樹海紀行”でコアな〈状況〉を現出させる。
愛実「“闇に関する報告書”は歌詞が全部英語で、意味がそもそもわかっていなかったので、正直レコーディングの時は何も考えずに歌えました(笑)」
杏優「“樹海紀行”は〈らんらん〉の言い方がみんな違っていて、メンバーの個性が出ている曲だと思います」
輝菜「この曲で初めてハモリをやったんです。いきなり言われたので〈えっ!〉ってなったんですけど、たぶんうまく歌えました(笑)」
愛望「これは本当なのかわからないんですけど、“樹海紀行”は最後に縄がギシギシいってるみたいな音が入ってるので、〈えっ?〉と思ってプロデューサーさんに聞いたら、作業音が入っただけって言ってました」
もっと大きいグループになる
そして感傷的なドリーム・ポップの表題曲“I would prefer not to”。〈目的もなく生まれたの なのにとても怖いんだよ〉と世を儚むような歌詞、どこか切実な歌声に滲むのは、〈生〉について真摯に向き合ったがゆえの〈死〉という選択か、あるいは……。
愛望「“I would prefer not to”はきっとみんなに愛される曲になるだろうなって思っています。MVではみんなが一人一人違う演技をしていて、それが繋がってストーリーになるんですけど、私は最後、畑の中で死ぬんですよ」
輝菜「でもライヴの振りでは死なずに、最後は後ろを向いて、全員で上を見るんです。〈あっちに行くよ〉みたいな感じで」
愛実「死を表現しているけど、暗くはなり過ぎていない」
杏優「死を待っている感じというか。歌詞も死を前向きに認める気持ちを書いたって聞きました」
葵奈「この曲ではわざとブレス音が入るぐらいの勢いで息を吸いながら歌っていて。それが苦しい感じなのか、がんばって生きようとしているからなのかはわからないですけど、すごくもがいてる歌い方をしました。ワンマンで歌うと絶対に泣いちゃうと思います」
12月27日には本シングルのタイトルを冠したワンマン・ライヴを東京・渋谷CLUB QUATTROで開催。この状況下においてなお現場での音楽体験を軸に活動する6人が、この先、様変わりした世界にどんな〈状況〉をもたらしてくれるのか。期待は尽きない。
すず「毎回新しいことに挑戦していってるので、これからもどんどん新しいことをやっていきたいです」
輝菜「普通の可愛いアイドル、かっこいいアーティストさんとかではない、それとは違う新しいジャンルを作りたいっていう話はメンバーとよくしていて」
愛実「私たちはなんて言っていいのかわからないんですけど、なんか個性的なんですよね。アウトローな感じ? 別に法律から外れてはいないんですけど(笑)」
愛望「あと、他のグループさんのライヴでお客さんが声出しをグッと我慢しているのを見ますけど、私たちはコロナ禍の中で結成したグループなので、最初から声出しがないんですよ。私たちのライヴはみんなが身体全体で楽しんでいる感じなので、シチュをはじめとして、そういうグループがどんどん増えたらいいなと思っています」
葵奈「いまはまだ自信が足りなくて〈私たちって……〉っていう感じですけど、新年はもっと大きいグループになって、ワンマンでZeppに立ちたいです!」
杏優「12月27日のワンマン以降も、今後のことが実はたくさん決まっていて。それにやっぱりアイドルをやっているからには立ちたいステージがいっぱいあるので、それを全部叶えていきたいです」
situasionのファースト・アルバム『debutante』(Sanbai)。