
そして、大河ドラマといえば、最後の〈紀行〉の部分で使われる音楽も毎年話題を呼ぶ。今年は、まずロック界のレジェンドとも言えるギタリスト、ポール・ギルバートが登場した。
「もともと憧れのギタリストのひとりで、MR.BIGの時代から彼のエレクトリック・ギターのサウンドが好きでした。だから、ぜひ今回登場して欲しかったのです。しかも、この〈紀行〉の音楽では、いわゆるエレクトリック・ギターのディストーションの音ではなく、クリアで繊細なメロディを演奏してもらっています。そのバックにはバンド系の楽器を使っていますが、そのバックの音も何度も調整して、ギターの音が浮かび上がるように考えて編曲しました」
〈紀行〉の音楽は長いドラマを通して何人かの演奏家によって紡がれて行くので、これからもどんな人が登場するのか、楽しみになって来る。
子供時代には日本のアニメーションやゲームに夢中になっていたとも語るエバン。そこから日本文化、日本の映画音楽などの興味を持つようになり、いつかは日本で音楽の仕事をしたいという夢を持ち続けていた。2012年から日本での音楽活動を開始し、最初に書いたように様々な音楽に関わって来た。
「実は、最初に日本に来た時に北鎌倉に住もうと考えたことがありました。海があり、山があり、歴史ある神社や寺があり、自然が豊かで、理想的な場所だと感じました。残念ながら北鎌倉に住むことはありませんでしたが、その時に感じた風景の美しさなどへの想いを、今回の音楽の中にも込めたいと思っています」
また新しい大河ドラマの1ページがここに刻まれようとしている。
エバン・コール(Evan Call)
1988年6月29日生まれ、米・カリフォルニア州出身の作・編曲家。バークリー音楽大学映画音楽作曲科卒。少年時代に日本のアニメ好きの友人の影響で日本のアニメに興味を持ち、大学卒業後に音楽クリエイター集団のElements Gardenに加入し、2012年より日本での作曲活動を開始。オーケストレーションを生かした壮大な楽曲から、メタル・サウンドやエレクトリック・サウンド、 民族音楽まで、幅広い楽曲作りを行なう。2016年にElements Gardenを離れ、ミラクル・バスに所属。アニメ、ゲーム、ドラマの楽曲制作や声優アーティストへの楽曲提供などを精力的に行なっている。
寄稿者プロフィール
片桐卓也(Takuya Katagiri)
1956年福島県生まれ。大学在学中にフリーの編集者/ライターとして仕事を始め、1990年頃からクラシック音楽のライターとして執筆活動を行う。「音楽の友」などのクラシック音楽系雑誌にインタヴュー、コンサート・レヴューなどを定期的に寄稿する他、CDライナーなども執筆。著作として「クラシックの音楽祭がなぜ100万人を集めたのか」(ぴあ刊)、「バロック・オペラ~その時代と作品」(新国立劇場運営財団情報センター)などがある。
INFORMATION
NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』
作:三谷幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤まさみ
出演:北条義時/小栗旬 政子/小池栄子 北条宗時/片岡愛之助 実衣/宮澤エマ 北条時政/坂東彌十郎 りく/宮沢りえ 源頼朝/大泉洋 八重/新垣結衣 他
放送:【総合】日曜日20:00/【BSP, BS4K】18:00/再放送【総合】土曜日13:05
※放送終了から7日間は配信サービス「NHKプラス」で見逃し配信中
www.nhk.or.jp/kamakura13/
