名門マタドールからのリリース、カート・ヴァイルやダイナソーJrらを手掛けたジョン・アグネロの共同プロデュース、そして奇才スティーブ・アルビニが所有するエレクトリカル・オーディオで録音……ともうオルタナティヴ・ロック・ファンにはたまらないワードが並ぶ。シカゴ出身の3人組ロック・バンドによるデビュー・アルバムは、それらの期待を裏切らないヴェルヴェッツやソニック・ユース直系のノイジーなパンク・ロックを鳴らすが、一方で90年代のシューゲイザーやポスト・パンクも通過しており、その佇まいはゆるさと暴力性が同居する2020年代のオルタナ・ロックと言っていい。演奏は決してお世辞にも上手いとは言えないが、生まれた音には間違いなくマジックが存在する名盤だ。