コラム

「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 ハンターバターサンド」ベストセラーの児童小説を独特なレトロテイストと現代的な問題意識でアニメ化

© 廣嶋玲子・ jyajya/偕成社/銭天堂製作委員会

レトロで不気味な世界観がくせになる、大ベストセラーシリーズ小説のTVアニメDVD第5弾

 〈銭天堂〉を知らない小学生はいないだろう。廣嶋玲子(作)、jyajya (絵)による児童向け小説「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」(偕成社)は、2013年に刊行をスタートしてから現在までに17巻を数える大ベストセラーシリーズ。2022年には、16万人の小学生が選ぶ〈第3回“こどもの本”総選挙〉で第1位を獲得。小学2年生になる筆者の娘も〈クラスのみんなが読んでいる〉と夢中だ。

 この原作をもとに制作されたアニメが2020年9月からNHKで放送されており、昔懐かしい駄菓子屋を舞台にしたレトロな雰囲気には大人も惹きつけられる。幸運な人だけがたどり着くことができる、ふしぎな駄菓子屋〈銭天堂〉。店主の紅子が勧める駄菓子を食べると、たちどころに悩みが消え、夢が叶うという1話9分のショートストーリー。夢を叶えられた人間が〈もっと、もっと〉と強欲になっていき、約束事を破ったりして破滅に追い込まれていく展開は「笑ゥせぇるすまん」に似ているところがあるかもしれない。

廣嶋玲子, jyajya, 富岡聡 『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 ハンターバターサンド』 コロムビア(2022)

 だが「銭天堂」で描かれるのは、そのようなストーリーだけではない。今回発売されるDVD第5弾では、紅子をライバル視している駄菓子屋〈たたりめ堂〉のよどみとの対決がクライマックスを迎えるが、〈たたりめ堂〉の駄菓子を食べた者は強欲に走り、〈銭天堂〉の駄菓子を食べた者は魔法の力を善行のために使ったり、駄菓子の力を借りずに自分で困難を克服したりするのだ。どちらの駄菓子を選ぶかはその人次第。果たしてふたりの勝負の行方はいかに……。

 〈地獄の正義 閻魔あめ〉を食べると正義感がエスカレートし、自分の考えだけが正しいと思い込んで他人を悪者と決めつけるようになるというくだりなど、今という時代ならではの問題意識が織り込まれているようでドキリとしたり。手描きの絵のような風合いのアニメーションも独特で、原作の世界観を損なうことなくイメージを膨らませてくれる。ただ残念なのは、娘がこのアニメを観て〈駄菓子屋さんに行きたい〉と言い出したものの、現実世界からはほとんど消えてしまっていることだ。

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