冒頭のソッリマ編“ボッケリーニのファンダンゴ”でカスタネットや彼女のヴォイスも入れて興趣を高めたあとにたっぷりと響くドビュッシー最晩年のソナタ。コーヴァンつま弾くギターと共にひたひたと、時にはあえぐような節回しで紡ぐはかなくも美しいヴィラ=ロボス。新旧の愛らしいシシリエンヌが立て続けに現れ、今度はマレの情感に満ちたフォリアがやって来てエスケシュへと橋渡す。二項対立的な新古の枠を脱した円環。その越境感、その架橋にだけに息づく感興と音楽の美しさこそが、聴き手を魅了する。ドビュッシーと同様、円環を地で行くような終り2曲(コベーキンはアナスタシアの実父)も打ってつけのピースだと得心。