考察と深読みを誘うメタなMV
2023年1月2日、“Ditto”とのカップリングでリリースされたNewJeansの新たなシングルアルバム『NewJeans ‘OMG’』。2022年8月発表のデビュー作『NewJeans 1st EP ‘New Jeans’』で一躍センセーションを巻き起こした彼女たちの、待望の2作目になる。
12月19日に発表されるやいなや、新曲“Ditto”が鮮烈なサウンドと魅惑的なミュージックビデオで大きな話題を呼んだことは記憶に新しい(詳しくはhiwattによるレビューを読んでほしい)。そして、それに続く今回の“OMG”は、まずはミュージックビデオでの表現が話題に……というか、考察や議論の対象に早速なっている(MVの監督は、“Ditto”も手がけたDOLPHINERS FILMのシン・ウソク)。
MVの舞台は精神科病院と思われる場所で、ハニが「私はiPhoneでした」と告白し、他の4人の問いかけにSiriの声で返答する冒頭のシークエンスからして、いきなりショッキングだ。ハニは、自分自身を消して他人に奉仕し、他人が望むものを提供するためだけに存在し生きてきたことを医師に向けて告白。そして、他の4人もなにかしらのトラブルを抱えていることが示唆され、映像は全体的にうっすらとホラーテイスト、夢と現実が相半ばする複層性を持っている。
なかでも、ダニエルのキャラクターが強烈だ。なんと彼女は、〈自分たちはNewJeansなんだ、いまはMVの撮影だ〉と思い込んでいる! 他にも“Ditto”との関連性が示唆され、MV・TV出演動画・ステージ動画・ダンスプラクティス動画の断片が挿入されなど、NewJeans、ひいてはK-Popアイドルそのものへのメタ的な描写が多数なされている。
極めつきはラストシーンで、〈MVの題材が不快なのって私だけ? 顔とダンスを見せるだけでもよかったで……〉とツイートしようとしている者にミンジが「行こう」と声をかける衝撃的なシーンでMVは結ばれる。これは、あからさまにアンチに対するコメントだろう。
“OMG”のMVで描かれているのは、おそらく、他人に奉仕するだけ、他人が望むものを提供するだけの、自分自身を表現する術を持たないアイドル、というステレオタイプな像への抵抗だろう。つまり、NewJeansは、〈私たちは私たちだけの、私たちがしたい表現をする〉〈時にはあなたたちが望まない表現だってするかもしれない〉と、ファンダム=Bunniesに挑戦状を叩きつけているのではないだろうか。もっと言うと、彼女たちは、ガールズグループやアイドルの既成概念、固定観念を壊していく、と宣言しているようにも見える。
とはいえ、すでに批判されているとおり、精神科病院をモチーフにした描写にはいささか疑問が残るし、MVが歌詞そのものとあまり関係していない点も気になる。ただし、完璧主義のプロデューサー、ミン・ヒジンにとっては、そういった批判もすべて織り込み済みかもしれない(だからこそ、あのラストシーンがあるのだろう)。