田中亮太「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の楽曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。2022年、第1回目ですね。今年もよろしくお願いします! この一週間の話題といえば、ウィークエンドの新作『Dawn FM』がリリースされたことでしょうか。先週突如アナウンスされてすぐにリリースされ、新年早々話題をかっさらっています」

天野龍太郎「ウィークエンドとの親交を深めていたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーがエグゼクティブプロデューサーの一人だというのもすごいですよね。『Dawn FM』はOPNのアルバム『Magic Oneohtrix Point Never』(2020年)との関連性も深いですし、僕はウィークエンドの最高傑作だと思いました」

田中「そこまで言いますか! まだ聴いていなくて、すみません……。そして、新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が広がっていることで、今月31日に開催予定だったグラミー賞授賞式が延期されたことも話題です。新たな日程は、まだ発表されていません」

天野「楽しみにしていただけに残念ですが、欧米での感染状況はかなり悪化しているので仕方ありません。日本でもオミクロン株の感染は急拡大中なので、今後のライブやイベントは延期や中止が増えそうですね……。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

★TOWER RECORDS MUSICのプレイリストはこちら

 

The Smile “You Will Never Work In Television Again”
Song Of The Week

天野「2022年最初の〈SOTW〉はスマイルの“You Will Never Work In Television Again”! レディオヘッドのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッドにサンズ・オブ・ケメットなどのドラマーであるトム・スキナー(Tom Skinner)を加えたニューバンドのファーストシングルです。スキナーはハロー・スキニーとしても知られていますね。この“You Will Never Work In Television Again”は、アグレッシブなギターと力強いドラム、トムの唾が飛んできそうなボーカルが強烈!」

田中「スマイルの音楽性はよく〈ポストパンク〉と形容されていますけど、この曲はUKよりもUSのそれからの影響を感じます。ペル・ウブやミッション・オブ・バーマといったバンドはもちろん、ハスカー・ドゥ、ビッグ・ブラックあたりのハードコアパンクの要素も入っている印象です。ある意味、トムとジョニーにとっては、グランジやシューゲイザーに感化されて出来たレディオヘッドの『Pablo Honey』(93年)以前に先祖返りしたような音楽性というか」

天野「〈あなたはもう二度とTVで働かない〉というタイトルや資本主義を批判したリリックもポストパンク的。というか、トム・ヨーク的ですね。スマイルは、1月29日(土)と30日(日)に英ロンドンでライブを3回行うそうです。配信もされるこの公演は、ライブストリームイベントのプロデュースで数々の賞を獲得している〈Driift〉が監修し、ライブパフォーマンスに映画のフィルムなどを合成した意欲的なものになるのだとか。チケットの購入はこちらから!」

 

Father John Misty “Funny Girl”

田中「2曲目はファーザー・ジョン・ミスティの新曲“Funny Girl”。4月8日(金)にリリースされる4年ぶりの新作『Chloë And The Next 20th Century』からのファーストシングルですね。同作は、ドルー・エリクソン(Drew Erickson)がアレンジ、ジョナサン・ウィルソン(Jonathan Wilson)が共同プロデュース、という布陣で制作されたのだとか」

天野「ファーザー・ジョン・ミスティのファンなので、新作のリリースはうれしい! それにしても、古風でアメリカンなアレンジで驚きました。1930年代のSP盤みたい(笑)。ミュージックビデオは『オズの魔法使』のオマージュだと思ったのですが、曲名は68年の映画『ファニー・ガール』からの引用のようです。彼の最大の魅力である歌詞は、〈アメリカ〉という国に歌いかけているようにも感じました。〈君のスケジュールはクレイジー/キャシー(ギャグ漫画のキャラクター)の実写版のためのインタビューだなんて〉〈君は若いけど、それ以上若くはならないよ〉〈レターマンを魅了してパンツを脱がせて、僕をノックアウトした〉など、皮肉たっぷりで笑えます」

 

Vein.fm “The Killing Womb”


天野「続いては、米ボストン出身のメタルコアバンド、ヴェイン.fmの2年ぶりの新曲“The Killing Womb”。曲名を日本語に訳すと、〈人殺し子宮〉……? ホラー映画みたいですね。なお、上掲のMVにはゴアな描写があるので、視聴にはご注意ください!」

田中「ビデオの過激さに劣らず、この曲は激ヘビーかつ超絶スラッシャーですね。手数の多いドラムと肉切り包丁を叩きつけるかのようなギターリフが凄まじい。プロダクションにはインダストリアル色もあって、これは破壊力抜群だなと。その一方でソングライティングはしっかりしている印象で、メロディーはかなりキャッチー。今後、スリップノットやコーンといったバンドと肩を並べそうな、ポップなポテンシャルも感じさせます」

天野「この曲は3月4日(金)にリリースされるニューアルバム『This World Is Going To Ruin You』に収録。前作『Errorzone』(2018年)がすごくよかったので、今年はバンドの飛躍に期待です」

 

GOT the beat “Step Back”

田中「今週最後の曲は、GOT the beatの“Step Back”。GOT the beatはSMエンターテインメントのニュープロジェクト〈Girls On Top〉の特別ユニットで、BoA、少女時代のテヨンとヒョヨン、Red Velvetのスルギとウェンディ、aespaのカリナとウィンターという錚々たるメンバーで構成されています。〈K-Pop界のアベンジャーズ〉と評判になっていますね」

天野「ニュースを聞いて、さらに“Step Back”のビデオを観て、超興奮しました! 競争が激しいK-Popの世界では新人ばかりが注目されがちですが、世代を越えた夢の共演というところが最高。この“Step Back”はビートスイッチする構成もK-Popらしくていいですし、それぞれの個性を活かした歌やパフォーマンスもかっこいい。ただ、歌詞については、同性(女性)を攻撃するものとして読める部分があって、賛否両論です。僕も韓東賢さんの記事を読んで、〈これはちょっと……〉と感じました。次の曲は、足の引っ張り合いではなくて、お互いを高め合うリリックに期待したいです。ウィンター推しとして応援しています!」