©Robbie Jeffers

シカゴとLAのジャズを吸収した、総合音楽家のデビュー作

 シカゴのジャズ・シーンが面白い――改めてそう実感したのは、アイソトープ217°やシカゴ・アンダーグラウンド・プロジェクト、トータスのジェフ・パーカーらの関連作を聴きこんだ00年前後だった。そして、そのジェフやマカヤ・マクレイヴンのアルバムで重責を担ってきたのが、シカゴ出身でLAを拠点とするサックス奏者、ジョシュ・ジョンソンである。

JOSH JOHNSON 『Freedom Exercise』 Northern Spy/rings(2020)

 『Freedom Exercise』は、2年以上前にリリースされたデビュー作で、これが初CD化となる。アンサンブルのキモとなっているのは、ドライな音色と手数の多さが特徴的なアーロン・スティールのドラム。彼のドラマーとしてのセンスは、トータスのジョン・マッケンタイアのそれと通底しているように思う。ジョンは元々バストロというポスト・ハードコア・バンドのドラマーだった。アーロンの本作での熱を帯びたプレイは、トータスの01年作『スタンダーズ』を連想させる。

 また、ジョシュは、ウェイン・ショーターやハービー・ハンコックに学ぶためにLAへ赴いたそう。なるほど、彼のサックスを聴くと、ビバップ革命から新主流派の台頭までのサウンドが高密度で圧縮されていると気づく。ノスタルジーの産物ではなく、今なお第一線で活躍する両者から吸収した養分が、本作ではいよいよ大輪の花を咲かせたのだ。なお、奇矯なエレクトロニクスや極端なエフェクトの多用も効を奏しており、今様ジャズを無手勝流にブーストしたような佇まいがある。

 先述したジョン・マッケンタイアは、ドラマーとしても活躍する一方で、日本のGREAT3など、プロデュースした作品もあまたある。推測だが、ジョシュもまた、録音時のサウンド・メイクから、その後のポスト・プロダクションまで、主導権を握って制作を進めたのではないか。ジョシュは言うなれば、コンテンポラリーな総合音楽家なのだろう。本作の射程の長さは、ジャズを超えんとするジャズならでは、とでも言うほかない強度を備えている。