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UKや近隣に上がるポスト・ロック~サッドコアの狼煙

 まだ〈シーン〉と呼べる気運は醸成されていないものの、共にスリントの影響を自覚するブラック・カントリー・ニュー・ロード(特にアイザック・ウッド在籍時代)は、デスクラッシュと並ぶ界隈の代表格に違いない。そして、アパラチアン・フォークと現代音楽/ジャズが溶け合う清冽なサウンドスケープを聴かせるキャロラインもその一角。あるいは、コディン~ダスター直系の端正なスロウコアの55デルティックも得難い。ティエナンが推すルー・テリーは電子音も塗したサイケデリックな音響が魅力で、もう一人のギタリストであるマット・ワインバーガーはサタン・クラブ名義でジム・オルークも思わせる美しいフィンガーピッキングを披露。また隣国アイルランドだが、サン・Oやスワンズのアンビエント・テクスチャーにマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの音の強度を併せ持ったようなバンド、ランカムもこの際にぜひお見知りおきを。

左から、ブラック・カントリー・ニュー・ロードの2022年作『Ants From Up There』(Ninja Tune)、キャロラインの2022年作『Caroline』、ランカムの2023年作『False Lankum』(共にRough Trade)