多彩な楽曲に挑む、マイケル・ディーズ率いるジェネレーション・ユニット
ファースト・コールのトロンボーン・プレイヤーであり、アメリカ中西部を拠点に教育者としても精力的に活動しているマイケル・ディーズが、多世代にまたがるメンバーで、ニュー・アルバムをリリースした。テーマとしたのが、中西部で活躍するジャズ・コンポーザー、グレッグ・ヒルの作品だ。ヒルは、1984年39歳の時にジャズの作曲をはじめ、これまでにランディ・ナポレオン(ギター)やロドニー・ウィティカー(ベース)らデトロイトを拠点に活動するアーティストが、ヒルの作品集を発表していて、トラディショナル・ジャズと、コンテンポラリーな要素を絶妙にブレンドする作曲家である。
そのヒルの音楽に新たな息吹をもたらすべく招集されたのは、ディーズがYouTubeで発見したトロントで活躍するクラリネット・プレイヤーのヴァージニア・マクドナルド。ディーズの2016年、2018年のアルバムではドラムスをプレイしていた多才なピアニスト、ルーサー・アリソン。ディーズのグループや、アルツィーロ・オファリル(ピアノ)のアフロ・ラテン・ジャズ・オーケストラで活躍する女性ベーシスト、リアニー・マテオと、作曲家のヒルも「ニューヨークのヴァイヴスが感じられる」と絶賛するドラマー、コリーン・クラークだ。ゲストとしてヴェテランのジェフリー・キーザー(ピアノ)と、ロドニー・ウィティカー(ベース)も加わっている。
“Hello, Blues”、“The Goobye Blues”は、オールド・ジャズのブルース・フィーリングを、マクドナルドのクラリネットと、ディーズのトロンボーンが、絶妙のバランスで醸し出している。“Shorty’s Tune”では、エリントンのエレガンスをヒルズは表現する。エンディングの“The Other Shoe”は空気感が一変し、よりフリーキーなフォーマットで15分近くにわたって熱いインタープレイが交わされる。このワイド・レンジが、中西部の凄腕プレイヤーたちを虜にするグレッグ・ヒルの魅力なのだろう。その楽曲に真摯に対峙したジェネレーション・ユニットによって、また素晴らしい音楽が誕生した。