新録音セッション時のスナップ 大城正司(サックス)、西川幾子(EP) 吉祥寺GOK SOUND
撮影:磯田健一郎

和アンビエント直系にして稀代の傑作、磯田健一郎率いるOscilation Circuit待望の復刻

 Light In The Atticの『Kankyō Ongaku』が発表されて以降、ジャパニーズ・アンビエントは、〈知る人ぞ知る〉から脱却し確固たる地位を確立したのではないだろうか。熱心なファンでなくてもこの時代の、この類の音楽を気軽に耳にできるようになったのも現代に生きる人々の特権だろう。また一枚、傑作が僕らの目の前に甦る。Oscilation Circuit『Série Réflexion 1』である。

Oscilation Circuit 『Oscilation Circuit - Série Réflexion 1』 Silent River Runs Deep(2023)

 国産環境音楽、すなわち和アンビエントの始祖:芦川聡が設立した〈サウンド・プロセス・デザイン〉社。そこからリリースされた音楽作品で「波の記譜法」に次ぐ〈Réflexion〉シリーズ唯一の一枚。磯田健一郎と廣橋浩によるユニット:オシレーション・サーキットが1984年に紡いだ和アンビエント正統の系譜に位置する名盤である。世界中から注目されるこのジャンルであるが故、復刻を強く望まれていたがこの度未発表音源を加えLPリイシュー&初CD化を果たす。

 第1曲“Homme(萌夢)”では、特に影響を受けたというスティーヴ・ライヒの流れを汲むミニマリズムが恐ろしく心地よさを形作る。続く第2曲“Nocturne”は、いまや日本を代表するサクソフォーン奏者:須川展也が奏でる音により気怠さと美しさを兼ね揃えた一級品のアンビエント。第3曲“Circling Air”はライヒやフィリップ・グラスの如く21分に及ぶ音像変化が味わえるミニマルミュージックの極致。これらオリジナル盤収録の3曲に、“Nocturne”の2021年新録音版や続編“Nocturne II”などの未発表音源が加わり、収録曲は全7曲となる豪華エディション。

 同じアンビエントという種の音楽でもブライアン・イーノやハロルド・バッドとも異なり、吉村弘や広瀬豊らのような実に日本的な環境音楽に区分される。それ故に時代、国境を越えて愛される種の音楽であることを“現在”が証明している。