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失恋して、どん底まで落ちて

 2021年には、コロナ禍でダメージを受けたライヴハウスに人が戻るようにという想いを込め、ライブ会場限定の無料配布音源『夜の歌、夢で逢えたなら』を発表。現場主義を貫き、ライヴハウス・シーンでの支持を強めてきたWESNは今年6月に初の配信シングル“ミッドナイトソングライティング”を発表した。シャープな疾走感を湛えたビート、鋭利な響きを放つギター、創作活動に対する濃密な感情を反映したヴォーカルがぶつかり合うこの曲には、WESNの個性と決意が刻まれている。

 「今回のアルバム『EHON』のリリースが決まっていたので、まずは名刺代わりになる曲を出したくて。WESNらしさがあり、いまの自分たちの新しい表現も取り入れながら、ガシッとした曲にしたいと思っていました。タイトルは、かっこつけて英語にしてますけど、〈夜中に曲を書いている〉ということですね(笑)。僕は絵も描くんですけど、創作はやっぱり夜のほうが合うんですよ。アレンジはめっちゃアナログなやり方ですね。弾き語りしたものを聴いてもらって、全員で合わせて。それをずっと聴き返しながら、頭の中で展開とかを考えまくって、またスタジオで演奏して。だいぶ手間がかかってますけど、想像していたものが形になっていくとどんどん脳汁が出てきて(笑)、〈うわ! めっちゃ楽しい!〉ってなるんですよ」。

World’s End Super Nova 『EHON』 惑星堂(2023)

 “ミッドナイトソングライティング”を含むニュー・アルバム『EHON』は、ツモトの創造性とバンドのこだわりが凝縮された作品だ。

 1曲目の“惑星と流星群”は、〈約束を果たすため僕はここまで来たんだ〉というラインが印象的なミディアム・チューン。ライヴでも導入として演奏されている、WESNのテーマソングと呼べる楽曲だ。

 「ライヴハウスの景色と自分の心の中にある世界を行き来しているようなイメージですね。いろんな人との約束を思い出しながら、演奏に没入していくための楽曲というか」。

 大切な〈あなた〉の不在をテーマにした“愛の歌”、〈伽藍堂 僕の心は消えて無くなった〉からはじまる“ぬくもりの歌”は、ツモト自身の体験を下敷きにした楽曲。

 「失恋して、どん底まで落ちて、〈何のために生きたらええねん〉みたいになって。“愛の歌”“ぬくもりの歌”は、大好きだった人と一緒にいられなくなったときの曲ですね。いちばんキツかったときも、曲はずっと書いてたんですよ。たぶん、そうしないと自分の精神を保てなかったというか……。自分の想いを曲にして、人前で歌って。そうやって〈別れたことにも意味がある〉と思い込ませないと、人間としての形を保てなかったんだと思いますね」。