当代きってのリュートの名手だったピッチニーニによる1623年と1639年、2冊のタブラチュア曲集。1623年出版譜からは400年の歳月。近時では〈たまひび〉としての活動も印象深く、古楽領域で確かな歩みを重ねている佐藤亜紀子が選んだ17曲は、音楽家としての来歴と研鑽の道のりが遥かに映し出される感も加わり、実に味わいが深い。構成も練られ、中間6曲はテオルボの響きが聴き手を慰め、前後から包む込むように、アーチリュートによる果敢な探究の発露でありながら、どこか超越的な情感を呼び起こす珠玉が並ぶ。特に後半、半音階的トッカータやトッカータ第1番(1639)に聴くドラマは小宇宙を覗き込むようだ。