2022年6月にシングル“lullaby”でメジャーデビューした由薫。2023年2月にリリースした“星月夜”がドラマ「星降る夜に」の主題歌に抜擢され、デジタルを中心に大ヒットを記録。アメリカ・テキサス州で開催されたSXSWにも出演し、国内外で注目を集めるシンガーソングライターだ。そんな由薫が2024年1月17日(水)に満を持してメジャーファーストアルバム『Brighter』をリリースする。彗星の如くあらわれた由薫の音楽的魅力を、2023年11月10日に東京・渋谷のCLUB QUATTROで開催された〈由薫 2nd TOUR “Blue”〉のライブレポートとインタビューを通じて、ライターの森朋之に伝えてもらった。 *Mikiki編集部
洋邦を越えたグローバルポップを目指す注目のシンガーソングライター
〈洋楽と邦楽を行き来しながら、国境を越えたグローバルポップスへと昇華する〉――由薫が掲げたビジョンは、確実に現実のものになりつつあるようだ。
2000年、沖縄生まれの彼女は幼少期をアメリカ、スイスで過ごし、物心ついたときか海外のポップスに親しんできた。アコースティックギターを手にしたのは15歳、そして、オリジナル楽曲の制作をはじめたのは17歳のとき。ライブハウスでの活動もスタートさせ、少しずつ自らのスタンスを作り上げてきた。
そして2022年6月にToru(ONE OK ROCK)のプロデュースによる“lullaby”でメジャーデビュー。“星月夜”(ドラマ「星降る夜に」主題歌)のヒットによって、大きく知名度を上げた。2023年5~6月には初の東名阪ツアーを開催。さらに秋には〈2nd TOUR “Blue”〉を行い、ライブパフォーマーとしても成長を続けてきた。2024年1月には待望のメジャーファーストアルバム『Brighter』をリリース。〈デビューからここまでの辿ってきた道、これから辿る道を見つめながら制作しました〉という本作は現時点での集大成であると同時に、アーティストとしての進化をダイレクトに示すアルバムに仕上がっている。
美しさと憂いを感じさせるボーカルは、夜明けを待つ青い光そのもの
ねじを巻く音、オルゴールの音、波の音などをちりばめたSEとともに由薫が登場すると、幅広い年齢層のオーディエンスが拍手で出迎える。ライブの幕開けは、由薫の独唱に導かれたデビュー曲“lullaby”。美しさと憂いを同時に感じさせるボーカルは、まさに〈Blue〉――夜明けを待つ青い光――そのものだ。さらに浮遊感のあるサウンドと切ないメロディが響き合う“ミッドナイトダンス”、アコギと歌からはじまり、ジャズの雰囲気をまといながら広がる“欲”など、冒頭から豊かな音楽性をしっかりと体現してみせた。
「ツアー〈Blue〉ではワンマンだから出来ることをやりたいと思って。次の曲はアレンジバージョンでお届けしたいと思います」というMCに導かれた“Blueberry Pie”では、コーラスのパートを観客と一緒に合唱。さらにアコースティックな手触りのシックなチューン“Fish”、インディーズ時代の名曲として知られる“ヘッドホン”――〈ねえ 音楽を作るよ、君のために〉というフレーズが愛らしい。楽曲を重ねるにつれて笑顔が増え、心地よい歌声を響かせた。
言いたいことは全部、曲のなかにあります
「1stツアーではみなさんがたくさんのものをくれたから、今回は私の世界にお連れしたくて。テーマは〈夢〉なんですけど、(会場を見まわしながら)これが既に夢みたいですね。ありがとうございます」というMCを挟んで届けられたのは、“星月夜”だった。ドラマ「星降る夜に」主題歌として話題を集めたこの曲は「言いたいことは全部、曲のなかにあります」というMCからはじまり、ドラマティックな旋律を感情豊かに歌い上げると、会場全体が大きな感動で包まれた。
スウェーデンのクリエイターとコライトした“Blue Moment”ではミラーボールの光がフロアを美しく彩る。このツアーのために制作された“Swimmy”によって観客のテンションをしっかりと引き上げた後は、“gold”。エレキギターのキャッチ―なリフと〈わがままに見えてもいい/枯れたなら何度も咲かせ咲かせて〉という歌詞が共鳴し、ライブの高揚感はピークに達した。