UK新世代女性シンガー、エディション・レコーズの新レーベル〈E2 Music〉から日本限定で初ソロ・アルバムをリリース!

 中音域に広がる歌声に、温かみと深みとが感じられる。穏やかに、その歌声はいろんな扉を開いていく。冬なら、寒い外出先から帰ったときの暖炉の灯りへの、夏ならそよ風が揺らぐ日陰への。ジャズでもあり、ソウルでもあり、懐かしくもあり、新しくもある、と同時にそのいずれでもない。確かなのは、扉の向こうには未知なる景色が存在することだ。そんな歌声が評判のシンガー、フリーダ・トゥレイとはどんな人物なのか。メールで質問を送り、返ってきた答えを交えながら紹介しよう。

 ロンドンを本拠地にするが、ガンビア人とスウェーデン人の両親を持ち、スウェーデンで生れた。「父はガンビア人でレゲエを沢山聴いて育ったので、私の子供の頃は周りではいつもレゲエが流れていました。母はブルースと70年代のアメリカン・ロックが大好きでした。子供の頃、音楽の味を覚えたとき、私は手に入るものなら何でもスポンジのように吸収していました」とふり返り、「10代の頃はR&Bやポップ・ミュージックが大好きでした。デスティニーズ・チャイルドやアリーヤ、ブランディとか沢山。10代の後半はネオソウル、エリカ・バドゥやディアンジェロ、ローリン・ヒルが多かったですね」。そんな彼女にとっての、音楽家を目指す決定的な瞬間は、「たぶん、11才の時に、アリシア・キーズの『ソングス・イン・A・マイナー』を聴いたときです」。

 スウェーデンの小さな街では音楽シーンも狭かったので、2010年、20才でロンドンへ。BIMM(The British And Irish Modern Music Institute)に進学するためだ。「毎日音楽に浸っていたかったし、ロンドンはそのための場所でした。そしていまもそうです。BIMMにいることは大好きでした。同じような考えを持つ人たちに囲まれて、音楽を中心とした生活を送れることに興奮したのを覚えています」。サム・クロウと知り合ったのもBIMMでだった。彼は、そこでの教師で、彼を通じていろんなミュージシャン仲間とも知りあうことになる。そして、ネイティヴ・ダンサーの一員として活動が始まる。バンド名は、ウェイン・ショーターの同名のアルバムに起因する。

 「2012年に一緒にジャムを始めたんだけど、バンドの全体的な精神は常にジャンルの域を越えることでした。私たちは、ジャズとR&B、ソウルとヒップホップを混ぜ合わせ、自分たちが影響を受けたもの全てを自由に表現したような音楽を作ったのです。バンド名は、はい、ウェイン・ショーターの同名アルバムに起因します。バンドのメンバーたちにとって、とても思い入れのあるアルバムです」。

 そのいっぽうでもリアン・ラ・ハヴァスやリアム・ギャラガーら、多くのアーティストたちのバックで歌ったり、セッションを通じて名をあげていった。殊に、「リアン・ラ・ハヴァスは、私にとって最高の教師です。彼女は、バンドをリードしながら、この業界で女性であることの意味について私に多くのことを教えてくれたし、クリエイティヴな面でも大きな影響を与えてくれました。バック・ヴォーカリストという専門的な職業に深い誇りを植え付けてくれたのも彼女です」。

FRIDA TOURAY 『Mending』 E2 Music/コアポート(2023)

 そして、『メンディング』は、そんな彼女が完成させた初のソロ作品だ。「私は長い間バンド、ネイティヴ・ダンサーをやっていて、自分自身が何者なのか、何を言いたいのか、自分の確信というものをみつけようとしていました。パンデミックの間、家にいたおかげで、ソロ・アーティストとしてのアイデンティティを確立できたと思います。『メンディング』は私にとってライフラインのように感じられるプロジェクトでした。私はこれを大きなハグのように感じて欲しかった。古いロマンス、ノスタルジア、女性らしさ、そして美しさをキーワードにして、作っている際にもそれは損なわれなかったように感じています」。最後に、ご自分であなたの音楽を紹介するとすれば、どう紹介しますか、という質問には、こう答えが返ってきた。「最近は、自分の音楽をソウル/フォークと表現することが多いですかね。ただ、人々が他の言い方をしてもかまわないですが」と。

 


フリーダ・トゥレイ(Frida Touray)
スウェーデン出身。2014年に音楽専門学校BIMM(British And Irish Modern Music)Instituteロンドンを卒業。2015年からUKのシンガー・ソングライター、リアン・ラ・ハヴァスのバック・ヴォーカルを務めサム・クロウをリーダーとする新世代ジャズ/フューチャー・ソウルの〈ネイティヴ・ダンサー〉に参加。その後、リアム・ギャラガー、エド・シーラン、エリー・ゴールディング、シネマティック・オーケストラ他のツアーやレコーディング共演、2020年にはリアン・ラ・ハヴァスの新作やジョーダン・ラケイがコモンをフィーチャーした“Signs”では共作者として参加した。2022年にはゴールディーのデュオ・プロジェクト“Subjective”のシングル“Lost”でトム・ミッシュと共にフィーチャリング・アーティストとして参加している。