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ABARERO

9thシングルで、作詞・作曲はSOULHEADのTSUGUMIに加えてTOMOKO IDA、編曲もTOMOKO IDA。

トラップメタルとEDMが融合したようなすさまじい激しさで、重いサブベースとキック、低音のホーン、破裂音のようなスネアドラムを中心にしたビートに対抗する6人のラップもヘビー。中毒性の高いウワモノの音、中近東から南アジアあたり少々を思わせるフレーズは、2000年代にヒップホップ/R&Bシーンを席巻したプロデューサーであるティンバランドが確立した、いわゆる〈チキチキ〉系のサウンドを思わせる。

田中の〈Ayy〉に続いて押し入ってくるジェシーの力強いラップ、そして歪んだ音質で繰り広げられる〈Badなバイブス〉の田中のラップが印象的だ。田中のラップのフロウはBAD HOPの名曲“Friends”(2021年)におけるJP THE WAVYのそれとの類似が指摘されているが、トラップビートに対してあのように言葉を詰め込むフロウは現行のUSヒップホップのパターンの一つで、日本語ラップシーンでもよく聴くことができる。

〈Can’t nobody hold us down now〉というリリックから始まる、松村・髙地・京本が清廉な歌を聴かせる部分は、EDMで言うところのビルドアップというパート。そして田中の〈Are you ready Monsters?〉に低く変調された〈Monsters〉的な声が被さり、サビにあたるドロップに突入する。ここではメインである6人のユニゾンに対して田中がアドリブを加えており、声にはオートチューンがかかっている。サビの終わりにエンジン音を模したアドリブを入れているのも、かなりヒップホップマナー。

 

Something from Nothing

ここまで怒涛の展開が続くが、SixTONESの曲としての衝撃度の高さで言ったら、“Something from Nothing”が最強かもしれない。というのもこの曲は、思いっきりメタルに振り切れているからだ。

英語が大部分を占める作詞はJamesy MinimalとSoma Genda、作曲はNaoki ItaiとMEGと瀬恒啓、編曲はNaoki ItaiとMEG。Itaiはミクスチャーロックバンド、E.P.O(元EdgePlayer)のギタリストで、西野カナ、ONE OK ROCK、THE ORAL CIGARETTES、緑黄色社会といったJ-POP/J-ROCKシーンの作編曲家として活躍しており、SixTONESの曲も多数手がけてきた。MEGはARTEMAというメタルコアバンドの元ボーカリストで、彼もJ-POP/J-ROCKシーンで多数の作品に関わっているが、有名なのはMEGMETAL名義でBABYMETALの曲に携わっていることだろう。

2人の手腕が見事に発揮され、“Something from Nothing”は、ハードコアパンクとメタルの融合体であるメタルコアや、メタルコア+デスメタルのデスコア系のサウンドに仕上がっている。電子音の取り込みも現代的なメタルコアの典型だし、現行メタルを代表するUKのバンド、ブリング・ミー・ザ・ホライズンの曲を思わせる部分もあり、SixTONESの新境地を見せる作品であることはまちがいない。

音数の少ない1番のA・Bメロから、サビでヘビーなギター・ベース・ドラムが一気に畳みかける構成が見事だ。歌メロは全体的に流麗だが、サビ終わりには田中のラップが入り、声には歪んだエフェクトもかけられている。度肝を抜くのはその後、〈あ゛ーーーーー〉(歌詞カードでは〈OHHHHHH..〉となっている)と吐き出すデスボイスだ。ヘドバン必至。いやはや、鳥肌が立つ。メタラーも必聴だろう。

 

ここまでが、超アグレッシブなアルバム前半。SixTONESのパワフルで〈Bad〉な魅力と色気が詰まっているが、6曲目のバラード“Only Holy”(6人の美しい歌唱、クリスマスムード、Cメロの転調などが聴きどころ)で流れは一転、彼らの別側面を提示していく後半が始まる。

前半は細かな部分に多くの字数を割いてしまったので、後半の曲については音楽的な部分を少々駆け足でピックアップしていこう。