東京を拠点に活動する3人組バンド、Sugar Houseの音楽は闇夜に点滅するフラッシュ・ライトのように鮮烈で眩い。2019年に結成された彼らは、2021年にファーストEP『Surface』をリリース。ポスト・パンクやガレージ・ロックから影響を受けた焦燥感に溢れるサウンドで、インディー・リスナーに注目された。

 「結成した頃はダイヴとかキャプチャード・トラックスのバンドをすごく好きだったんで、いまよりもシューゲイザーっぽい音を鳴らしていました」(Ren Kobayashi)。

 「日本のバンドだとnever young beachやTeen Runningsのライヴによく行っていましたね。特にDYGLは、メンバー全員で観に行くくらい好きです」(Ryosuke Makiyama)。

Sugar House 『Sugar House』 WAREHOUSE TRACKS(2024)

 『Surface』以降は、コンスタントに配信で楽曲を発表していたが、ついにファースト・アルバム『Sugar House』が完成。既発曲から厳選された楽曲に新曲を加えた10曲を収録している同作は、EP時よりもギター・ポップやネオアコの要素が増えており、瑞々しいメロディーやキラキラとした音色が魅力的だ。

 「シンプルに〈いま入れたい曲を選んだら、これになった〉という感じなんですけど、ハードすぎない作品にしたいという気持ちはあったかな。全体的にかなりクリーンなサウンドになりましたね」(Kobayashi)。

 アンビエントなサウンドスケープのなかで〈There are always so many kids〉と繰り返される“Intro +”から始まるアルバムは、シンセとオートチューンのヴォーカルが爽快でアップリフティングな“25”、キャッチーで甘酸っぱい“Just Wanna Live It Up”、『Surface』収録の人気曲を再録した“Part of life”など、メロディアスな良曲揃い。「全曲シングル・カットできるものをめざした」とKobayashiは語るが、そうしたポップ志向には、日英を代表する2つのバンドからの影響があったという。

 「The 1975が大好きなんです。いちばん目標にしているバンドかもしれない」(Kobayashi)。

 「アルバムを作るにあたってThe 1975のファーストから最新作までを順番に聴いていきました。そこから、彼らが影響を公言しているフリートウッド・マックのリズムを研究したり」(Makiyama)。

 「よりポップなサウンドに向かったのは、自分のルーツにGalileo Galileiがあるのも関係している気がします。音楽にハマったきっかけのひとつが彼らの『PORTAL』というアルバム。あのアルバムに衝撃を受けて、彼らが聴いている洋楽をチェックするようになって」(Kobayashi)。

 クラウトロックの直線的なビートにブリット・ポップの狂騒をブレンドしたかのような“I WANT IT”、ダウナーかつ美しい“The Fog”、2000年代のプライマル・スクリームを彷彿とさせるサーカスティックなロックンロール“Shadows”といった楽曲もアルバムのアクセントとして効いている。

 「“I WANT IT”を作ったときは、LCDサウンドシステムを聴いて、リズム・マシーンやシンセ・ベースを足したりしました」(Kobayashi)。

 「この曲はRenくんのハチャメチャな側面が出ている。僕は好きですね」(Makiyama)。

 「“The Fog”は、今回のアルバムのなかで最後に出来た曲なんです。これまでのSugar Houseにはなかったタイプの曲なので、苦労したけれど、そのぶん達成感がありました」(Kobayashi)。

 本作で間口を広げたSugar Houseは、よりビッグな存在になるのだろう。

 「オーヴァーグラウンドとアンダーグラウンドの架け橋となるようなバンドになりたいです」(Yusuke Aoki)。

 「The 1975の最新作にも関わっていたブリーチャーズのジャック・アントノフが好きで、制作時もよく聴いていました。彼は、最高のポップソングの作り手でありつつ、インディー・ポップ・アーティストとしても魅力的な存在ですよね」(Kobayashi)。

 


Sugar House
2019年に結成。Ren Kobayashi(ヴォーカル/ギター)、Yusuke Aoki(ベース)、Ryosuke Makiyama(ドラムス)から成る3人組。2021年にDYGLのKohei Kamotoを制作に迎えたファースト・7インチ・シングル『Normal04 / Dry』を発表し、同年にEP『Surface』をリリースした。2023年に結成時からのギタリストが脱退するもサポート・メンバーを迎えて活動を継続し、このたびファースト・アルバム『Sugar House』(WAREHOUSE TRACKS)をリリースしたばかり。