1980年代半ばのロイヤル・リヴァプール・フィルとのシューマン交響曲全曲録音から約40年を経ての再録音。楽譜を徹底的に読み込み、明晰に構築した名演。過去には管弦楽の響きへの懸念から改変された作品群に対し、シューマンの書いた楽譜そのものこそ底光する音の魅力があることを伝え、テンポよく音楽が流れていながらときに闇を含んだ歌心がある。“春”はゆったりしたテンポのスケルツォ楽章の中間部が独特。第2番はアンサンブルが良く、高揚感に満ちる。“ライン”では第1楽章での繰り返される低弦の上昇音型を浮かび上がらせ、トレモロの強弱を自在に操る。第4番は随所で旋律を奏でる木管が浮かび上がる。