レオノーレ役のダヴィドセンの輝く歌声に圧倒される。フロレスタン役のエルスナーも好調。指揮者ヤノフスキによって満を持して録音された“フィデリオ”は現在の録音技術を駆使した〈レコード芸術〉。実演では耳にできない木管のパッセージも耳に届き、膨らみのある温かな音色で気持ちよく音楽が進む。ライナーノーツにある録音風景の写真を確認すると歌手もオーケストラも個々に距離をとった配置。それでもヤノフスキの的確な指揮でアンサンブルは崩れない。レオノーレなどが歌う二重唱や三重唱は左右に定位し、自然なバランスが保たれる。そして終幕の合唱は広がりのある音場と立体感が素晴らしい。