
多彩な音楽を通過しジャズに辿り着いたギタリストの集大成
――“886”はバンド時代に作った曲だそうですね。
「もう10年ぐらい前、22、23歳の頃に作った曲です。実は、曲名には公にできない由来があるのですが(笑)。嫌なことがあっても、時間が経つと良い思い出になるので、それを曲に残そうと考えて書いたんです。
バンドをやっていたことは先ほどお話ししましたが、ゴリゴリのロックバンドをやっていると、ギタリストであることよりもバンドのメンバーとして一心同体であることのほうがどうしても優先されるんですよね。だけど自分はギタリストでありたいという気持ちもあり……そんなふうに迷っていた葛藤の時期に書きました」
――リズムはワルツで、コードの展開の仕方がとてもおしゃれだと思いました。
「サビのコード進行は、ユーミンさんや桑田佳祐さん、宇多田ヒカルさん、羊文学の曲などJ-POPやボカロでもよく使われている定番の456進行なんです。それを、コソっと入れています。
普通だったらメジャーコードで落ち着くようなところで同主短調のマイナーコードに向かわせてちょっぴり切ない感じを出してみたりとか、意識して定番から少し外れるような曲想にしました」
――最後の“Tears of Rainbow”はアルバムの熱気を静めてくれるような、美しいメロディをもったバラードです。
「“Play is Work”のバラード版というか、これもスタンダード的な曲が欲しくて作った曲です。
レコーディングではソロを入れたテイクも録ってみたのですが、結局はいちばんシンプルなテイクを選びました。バラードって結構難しくて、ともするとソロや演奏時間が長くなってしまいがちなので、ライブだったらいいかもしれませんが、レコーディングではできるだけコンパクトにまとめたかったんです」
――これまで全曲について聞いてきましたが、すべてがオリジナルで、竹内さんのキャリアの集大成的なアルバムと考えていいですか?
「はい。ファーストアルバムでは、まさにこれまでの活動の集大成的な意味を込めて、僕がジャズの世界を知ってから作りためてきた曲で構成しました。
これから始まるアルバムリリース記念のライブツアーでもこれらの曲を中心にお届けしようと思っていますので、アルバムとライブの違いをぜひ楽しみにしていてください」
40歳でスタンダード集を――ギタリストとして進化を続けたい
――現在使用しているギターについても教えてください。
「ずっとTokaiのES-335を使っていたのですが、トップがメイプルの合板で、音が硬く重かったので、スプルーストップのセミアコをずっと探していたんですよ。それで、渋谷のギターショップ〈ウォーキン〉がプロデュースしているWestvilleシリーズのVanguardというセミアコを使っています。もとはカート・ローゼンウィンケルが開発に参加していたモデルです。結構重たくて生鳴りはあまりしないのですが、アンプを通すとめちゃくちゃ良い音が鳴るんです。セッティングをとことん詰められるうえに、僕は握力が低くて手も小さいのですが、Westvilleのギターはいくら弾いても疲れないのが気に入っています。ネックの幅は少しありますが、反らないし軽く押さえられてピッチも良い。
現在はこれがメインですが、将来的にはフルアコも使ってみたいですね。とんでもない円安でギターも弦も高騰しているので、我慢していますが(笑)」
――フルアコも弾くとなると、どんどんジャズの王道に近づいていきますね。
「今後オリジナル作品をベースに活動しながら、40歳ぐらいの良いタイミングでスタンダード中心のアルバムを出せたらいいな、と考えているんです。そして、そのときにはやはりフルアコを弾いて録りたいんですよね。
僕は現在32歳で、25歳までロックバンドをやっていて、2017~2018年頃にジャズクラブで初めてライブをやりました。同世代のジャズプレイヤーより遅くこの世界に足を踏み入れて、ロックとはまったく違う文化圏だと感じているけど、そんな自分だからこそできる、届けられる音楽があると思っています。
ギタートリオの作品にもチャレンジしたいですし、やりたいことが沢山ありますが、今しか作れないオリジナルもあると思うので、ギタリストとして進化を続けていきたいと思います」
――そういえば、盟友Qaijffとの対談で、内田旭彦さんが「シーンとかに縛られず、シンプルにカッコいい音楽であればなんでもいいよね」とパワーのある言葉をおっしゃっていましたね。
「内田さんは僕を理解してくれる性格かつイケイケドンドンなタイプで、いろいろな方に繋げてくださったり、内向的で疲弊しがちな僕を奮い立たせてくれるんです。僕は自分が納得できるものが作れたら一人で満足しちゃうタイプで、些細なことを気にしてしまうところもあるし、ネジが外れたイングヴェイのようにぶっ飛べていないんですよね(笑)。学生時代にイングヴェイのぶっ飛んだインタビュー集をシワシワになるくらい読み込んでいたのですが、ああいうマインドは音楽家にとって大事だと思っていて、そういった部分を内田さんに補完していただいているような感じです。
ジャンルの定義についての議論も好きな音楽にたどり着く道標として必要性は理解しつつ、自分自身でそこに拘るつもりはないので、シンプルに〈ギタリスト竹内勝哉〉として僕の音楽を聴いてもらいたいですね。イングヴェイのような俺様マインドも、時には必要かもしれません(笑)」
RELEASE INFORMATION

リリース日:2024年4月23日(火)
品番:FUK001
タワレコ特典:ギターピック(先着)
価格:3,300円(税込)
TRACKLIST
1. Lift Off
2. Interstellar
3. Timeline
4. Maze
5. Play is Work
6. Iriai
7. Erupt
8. 886
9. Tears of Rainbow
■RECORDING MEMBER
Guitar 竹内勝哉
Piano / Syn. 平手裕紀
Bass 荒川悟志
Drums 杉山寛
LIVE INFORMATION
アルバムリリースツアー
2024年5月24日(金)愛知・名古屋 Mr. Kenny’s
2024年5月25日(土)三重・四日市 HOLYHOUSE STUDIOS
2024年5月26日(金)東京・荻窪 velvetsun
PROFILE: 竹内勝哉
愛知県名古屋市出身。15歳でギターを始めロックに傾倒。高校進学と同時に音楽活動を始め、SCHOOL OF LOCK!、Sony Music、auが主催する全国10代のアーティストを対象にしたロックフェス型オーディション〈閃光ライオット2009〉にエントリーし、ファイナリストに選出された。東京ビッグサイトにて演奏、コンピレーションアルバムに参加。音楽専門学校を卒業後、所属バンドにて全国流通盤を複数枚リリース。ラジオ・TV等メディアへの出演、各地での演奏活動を精力的に行うほか、ギタリストとしてQaijff、ベイビーレイズJAPAN等のレコーディングに参加しプレイヤーとしての活動を開始。同時期に以前より興味のあったジャズギタリストのサウンドに惹かれ、ジャズギターを清水行人に師事。自身の変化と共に音楽活動を移行させた。現在はギタリストとして東海地方のジャズクラブを中心に自身のオリジナルカルテットやサイドメンバーとして演奏活動を行うほか、プロサッカークラブ名古屋グランパスのスタジアムBGM、劇伴、バンドサポート等ポップス・ロック系のレコーディング参加や演奏も行っている。2022年には豊田スタジアムにて明治安田生命J1リーグキックオフ前に名古屋フィルハーモニー交響楽団との生演奏を行う等ジャンルに囚われない活動を行っている。
オフィシャルサイト:https://k-takeuchi.net/