昨日7月25日、Fujii Kaze(藤井 風)が〈FUJI ROCK FESTIVAL〉に初出演した。ヘッドライナーによるトリ前、メインのGREEN STAGEで凄腕バンドメンバーとともに繰り広げたパフォーマンスは配信で視聴した者の間でも大いに話題になっている。果たして現場ではどうだったのか? 苗場から現地レポートが届いた。 *Mikiki編集部
あまりにも隙のないパフォーマンス、それでいて何者にも縛られない、縛ることなどできないと思わせるライブだった。ライブが終わった瞬間から会場に飛び交っていた「ヤバかった」という興奮の言葉を聞きながら、この文章を打ちはじめている。
藤井 風の出演が発表された瞬間、出演日が決まった瞬間、ライブ配信がアナウンスされた瞬間。とにかく藤井 風とフジロックに関する情報が解禁されていくたび期待は膨らんでいった。苗場へ向かう道中も、フェス初日に会場内を歩いていても、いたるところで彼の名前が聞こえた。去年は山下達郎、3年前には矢沢永吉でこれらと同様の体験をしたが、彼らと藤井 風のキャリアを比較すると今年がどれだけ特別なことなのかを痛感させられる。
藤井 風の前に登場したベースメント・ジャックスがベストオブベストと言っても過言ではない、パーティー感満載のライブを繰り広げたことでGREEN STAGEは活気に満ちていた。その後ヘッドライナーとして登場したクルアンビンは、卓越した演奏と大自然に溶け込むような選曲で観客を魅了した。世界の名だたるフェスで重要なスロットを任されているこれら2組の間に、ある種日本代表として藤井 風は登場したのである。
ライブ本編の熱狂は、開演前から巧みに準備されていた。巨大なステージセットが運び込まれ、サウンドチェックがはじまり、開演5分前にはなぜか藤井の食事シーンがステージ後方のビジョンに流された。誰もがこれから彼が登場するであろうGREEN STAGEそのものに視線と意識を向けていたが、これこそが藤井 風チームの狙いであった。
演奏メンバーがステージに現れ、宮川純(キーボード)がしっとりとメロディーを奏ではじめる。そしてサックスを手にした藤井 風の姿がステージサイドのビジョンに映し出されると大きな歓声が上がった……のも束の間、彼がステージに向かい合うように設けられたPA席から現れたのだ。
先ほど言及した開演前のあらゆるアクションが、この驚きの演出に向けた助走だったことに気づかされる。藤井自身がこの日のステージを特別なものにしようとしていることが、この瞬間に十二分に伝わってきた。
PA席から“ガーデン”を吹きながらステージへと上がり、サックスを置いて〈空の果て〉と高らかに歌い上げてからの高揚感は格別だった。その昂った感情と会場の熱気を次の“まつり”でひとつにまとめ上げたのだから流石だ。
ライブ序盤は“何なんw”“もうええわ”“死ぬのがいいわ”と1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』からの選曲が目立ったのも印象的だった。現在10月からのワールドツアーに先駆けて日本国内3カ所を巡る〈Pre:Prema Tour〉を行っているだけに、てっきり最新作の『Prema』を主軸にした、それこ4月のコーチェラ・フェスティバルのセットに少し手を加えた程度の選曲になるのではと予想していた。
もちろん、ただキャリアの初期をプレイするだけでなく、それらの楽曲がしっかり現在のモードにアップデートされていた点も重要だ。“何なんw”でのピアノソロは全身を使った躍動感のあるものに(配信に映っていたかはわからないが宮川が藤井の演奏する姿を見上げていたのが微笑ましかった)、“死ぬのがいいわ”は馬場智章(サックス)、広瀬未来(トランペット)、池本茂貴(トロンボーン)が加わりよりムードのあるアレンジに仕上がっていた。