メロディーズ・エコー・チャンバーとの意外かつ納得な共作
そんな彼らが、ファーザー・ジョン・ミスティやワイズ・ブラッドの作品を手掛けたフォクシジェンのジョナサン・ラドーを共同プロデューサーに迎えたのが2021年の前作『Ice Melt』だったが、収録曲の“Retreat!”や“Balloon”にはサイケデリックなシャンソンのような雰囲気もあったので、彼らが昨年フランスのメロディーズ・エコー・チャンバーとのコラボレートシングルを発表したのには、驚きつつも納得してしまった。
「メロディーズ・エコー・チャンバーの音楽は、いつも僕たちにインスピレーションを与えてくれるんだ! 普段の作曲やレコーディングのプロセスから離れて個々のホームレコーディングを行って、最終的に“Le Temple Volant”を完成させることができた」(ジェシー)
ラドーは新作『AMAMA』にも、再び共同プロデューサーとして参加している。
「ごく自然にそうなったんだ。前作『Ice Melt』の制作中に仲良くなったから、ほとんど続きのような感じだったね。ラドーはスタジオでは本当に遊び心に溢れていて、彼の考え方が前作の僕たちに大きな影響を与えているんだ」(ジョナサン・ギラッド)
ジョナサン・ラドーとの遊び心あふれる音の実験
遊び心と言えば、前作ではコンドームを被せたマイクを水の入ったバケツに沈めることで水中のサウンドを再現していたそうだが、新作でもそうした試みはあったのだろうか。
「“From Outside A Window Sill”の鍵盤の音を微妙に重ねた箇所で、ピアノにパテを塗ったりしたね。シンセの音をより立体的に感じさせるのに役立ったと思うよ。僕たちは一般的にそういう音で遊ぶのが好きで、何種類かの異なるソースを重ねて〈ひとつの音〉を作ることもある。それから、スピードを変えたり、テープのループを逆にしたり、ボーカルをピッチシフトさせたり、ドラムのサンプルをブラストしたり、携帯電話の録音(“AMAMA”のボイスメモや“From Outside A Window Sill”の警察無線など)を使って実験したりもしたよ。“From Outside A Window Sill”では、サックスのマウスピースでメロディーを演奏するのがとても楽しかった。レコーディングの過程で実験することはいろいろと楽しい気分になるし、どの曲がアルバムに入って、どれがまったく合わないかを判断するのはクールなことだ。時間をかけて試してみる価値があるよ」(ブライアン・アロナウ)
アルバムの収録曲中、いくつかの楽曲はバンド初期の出来事をモチーフにしており、たとえば“The Bug”はファーストアルバム(2019年作『Jinx』)のリリース前のツアーで泊まったモーテルのベッドで虫に刺された経験を、”Crushxd”は車での移動中に誤って轢き殺してしまった亀のことを歌っているという。特に“The Bug”のほうは楽曲自体もその頃から存在していたそうで、アルバム全体もサイケデリックポップ然とした前作から、バンド結成前〜初期の音楽性に回帰しているようにも感じられる。
「音楽的に、みんながその部分に気づいたようなのは興味深いね。リラのリリックには、以前のツアー時代のエピソードが取り入れられている。以前から確立していたスタイルから軸足を移そうとか、それを守ろうと意図的に決めたわけではないんだけど、何か楽器の音が僕らにとってよりあの〈時代〉を感じさせるんだ。特にこれらの曲には不吉で不気味な何かがあり、それが新しい曲とうまく調和していると思うよ」(ジェシー)