気鋭のバンドEYRIE
「火の鳥」を題材にして描き出す壮大な音楽

 人間の生と死や輪廻転生をテーマにして手塚治虫が壮大なスケールで描きあげた大長編漫画「火の鳥」。その連載開始から70年を迎える今年、その記念公式アルバム『火の鳥』が発表された。その音楽を作りあげたのは、鈴木瑛子(ピアノ/キーボード)、Rina Kohmoto(ピアノ/キーボード)、山近拓音(ドラムス)というバークリー音楽大学出身の俊英3人によるバンド、EYRIEだ。幼少の頃から愛読し、その影響を受けながら育ってきたと話す3人。彼らが「火の鳥」全編から選び出した印象的な10シーンを題材にして制作したアルバムはダイナミックでストーリー性に富んだもの。とりわけ衝撃的だったのは、ツイン・ピアノ(キーボード)+ドラムという小編成のバンドながら、オーケストラやラージ・アンサンブルに匹敵する芳醇なサウンドを具えている点だった。

 「(鈴木)瑛子ちゃんと私は一緒にバークリーで作編曲、特にビッグバンドやラージ・アンサンブルの勉強をしていたので、サウンドについては、それが反映されているように思います。ピアノは小さなオーケストラと言われますが、それでもひとりだけの演奏では、一度に出せる音には限界があります。それがふたりになると、やりたいことがぜんぶできるようになるんです」(Kohmoto)

 「ストーリー性に富んだ展開は、基本的にすべての楽曲を共同で作曲しているからでしょうね。最初に誰かひとりが曲のきっかけとなるものを書きあげたら、それをふたりに順番に渡し、そのやり取りを何回か繰り返しながら形にしていく。このやり方でライティングすると、曲が自分の想像を超えたレベルで広がっていくんです」(鈴木)

EYRIE 『火の鳥』 ユニバーサル(2024)

 そうした多様なメロディとハーモニーに溢れた楽曲を、山近のドラムがひとつにまとめあげ、さらに大きく発展させているのもEYRIEの特徴のひとつだ。

 「ピアノって、メロディとハーモニーを奏でる楽器というイメージが強いですが、実は打楽器的な側面も持っています。ですからそのピアノが2台同時に奏でられると、演奏中に聴いたことのないハーモニーやリズムが聴こえてきて、ものすごく感性が刺激されるんです。聴いていただいた方に、〈本当に3人の演奏なの?〉と思ってもらえるようなプレイを心掛けています」(山近)

 才気闊達なミュージシャン3人が広大な世界観を持つ音楽を織りあげるEYRIE。その音楽には、原作「火の鳥」と同様、世界へ、そして未来へと羽ばたいていくエネルギーが感じられる。

 


LIVE INFORMATION
「火の鳥」発売記念 対バンツアー2024

2024年6月28日(金)大阪・ 心斎橋 RUIDO
開場/開演:18:30/19:00
出演:EYRIE/Mlle.(マドモアゼル)/Testa
2024年7月4日(木)東京・渋谷 チェルシーホテル
開場/開演:18:30/19:00
出演:EYRIE/LA SEÑAS
https://eyrie.jp/

EYRIE 火の鳥 TOUR 2024
2024年10月24日(木)愛知・名古屋 ell.SIZE1
2024年10月25日(金)大阪・梅田 シャングリラ
2024年10月31日(木)東京・渋谷 WWW
http://www.vintage-rock.com/