(左から)太良理穂子、かのうみゆ、MAKOTO.、あさ陽あい

ジャンルや時代、地域に縛られることなく〈良い曲〉を選び、フレッシュな感性でリメイクする女性4人組・sis(シス)が2025年7月23日、2作目となるミニアルバム『DING DONGください』をリリースした。タイトル曲はトロット(日本の演歌や歌謡曲に似た韓国のジャンル)の人気曲をカバーしたもので、〈ヒャダイン〉こと前山田健一が訳詞とプロデュースを担当。そこにオーディション番組「トロット・ガールズ・ジャパン」出身のメンバーら(MAKOTO./かのうみゆ/太良理穂子/あさ陽あい)の表情豊かなボーカル&ハーモニーが加わると、得も言われぬ幸福感が広がっていく。この曲を筆頭に古き良き時代のヒットソングを多数カバーした本作は、早くも幅広い層のリスナーに歓迎されているようで、グループの代表作のひとつになるのは間違いなさそうである。Mikikiは上昇気流に乗る彼女たちにインタビューを実施。歌い手としての〈これまで〉と〈これから〉を率直に語ってもらった。

sis 『DING DONGください』 コロムビア(2025)

 

世界のヴィンテージソングを歌い継ぐグループ

――Mikiki初登場となります。まずはsisの基本的なコンセプトを教えていただけますか?

MAKOTO.「コンセプトは世界中のヴィンテージソングを歌い継ぐことです。デビューシングル『愛のバッテリー』と同じく、今回の『DING DONGください』もトロットの名曲をリメイクしているんですが、これからは韓国に限らず世界のいたるところにある昔から愛されている歌をとり上げていこうと思っています」

――結成したのは「トロット・ガールズ・ジャパン」の放映終了後のタイミングだったのでしょうか。

MAKOTO.「はい。ある日、声がかかって〈この4人でやることになったよ〉って。まさかこの顔ぶれでグループを作るなんて誰ひとり……」

――予想していなかった?

かのうみゆ「はい。まったく想像していなかったです」

――みなさんは本当に仲が良さそうですね。それでも最初に会ったときは一瞬でも〈この人と歌うの?〉と思わなかったのですか?

全員「ないです! 全然ないです(笑)!」

かのう「だって『トロット・ガールズ・ジャパン』に出演していたときから交流はありましたし」

あさ陽あい「そうそう、あったよね」

太良理穂子「私とかのうちゃんは番組収録のときに結構やりとりしていましたから」

MAKOTO.「4人ともに準決勝以上まで進んだので、一緒にいる時間が長かったんです。なのですぐに親しくなりましたね」

――オーディション番組出身のアイドルにインタビューすると、「ひとりでずっとがんばってきたからなのか、いざグループでデビューするとなると戸惑うことが多い」というコメントがよくあります。

MAKOTO.「私たちの場合、そんなことはまったくありませんでした。4人がそれぞれ違うジャンルで経験を積んできていますから」

 

K-POPから歌謡曲まで、4人のバラバラなルーツとキャリア

――みなさんがsisに参加する以前についていくつか質問させてください。MAKOTO.さんはK-POPアイドルに憧れたのがすべての始まりだったと聞いています。

MAKOTO.「特にBoAさんと東方神起さんが大好きだったんです。両アーティストが所属するSMエンタテインメントには他にも魅力的な方がたくさんいらっしゃって、かなり刺激を受けました」

――それでプロを目指して韓国の芸能事務所の練習生になるわけですね。

MAKOTO.「はい。精神的に大変な時期ではありましたが、あのときの経験があったからこそ、歌もダンスもレベルアップしたと思っています。今の自分にプラスになった貴重な日々でしたね」

――かのうさんは2018年に福岡から上京していろいろと多方面で活躍しました。そのせいなのか、ステージ度胸がある方だなと思っています。実際はどうなのでしょうか。

かのう「度胸あるよねってよく言われるんですけど、実は全然そんなことなくて。ステージに立つたびに緊張しています、ちゃんと(笑)」

――JUDY AND MARYの“Over Drive”(1995年)をよく歌っていますが、音楽的なルーツはあの頃のJ-POPですか?

かのう「ああいうロックバンドでやってみたいなあという思いはずっとありました。歌謡曲に関しては『トロット・ガールズ・ジャパン』で歌う機会が増えたとはいえ、もともとその前からSNSでカバーソングを披露していたので、ずっと愛着のあるジャンルですね」

MAKOTO.「かのうちゃんのルーツはテレビドラマ『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』でしょ?」

かのう「そうなんです。ディズニー・チャンネルで放送されていたあのドラマにもの凄く影響を受けたんです。8歳のときに観たのですが、主人公のハンナ・モンタナみたいになりたいと思ったのが、この世界に入る動機になりました」

――ハンナ・モンタナはJUDY AND MARYとは異なるイメージですよね。

かのう「でも華やかな感じが似てませんか? どちらもきらびやかで可愛らしく、かっこよくもある。そんな人になりたいんです」

――あさ陽さんは以前、アイドルグループの一員として活躍されていたんですよね。

あさ陽「はい。それでアイドルを卒業する直前に今後はどうしようかとすごく悩んだんです。幼い頃から歌謡曲や演歌に慣れ親しんできたこともあり、その方面に進みたいと決めたものの、具体的にどうすればよいのか分からなくて……」

――となると、現在の環境は理想的と言えそうですね。

あさ陽「自分がやりたいことにつながったと実感しています。本当にありがたいです」

――歌謡曲はどのあたりをよく聴いていたのですか?

あさ陽「演歌や歌謡曲がいつも流れている家庭で育ちました。私は習い事をしていて、祖父が車で送り迎えをしてくれたんですが、運転中には青江三奈さんの曲が常に流れていました」

――sisが得意とするトロット系のサウンドに近かったんですね。

あさ陽「そうなんです。そのような環境で育ったことに感謝しています」

――太良さんは18歳からナイトクラブで歌い続けてきたそうですね。

太良「ナイトクラブと言っても一般的なイメージとは少し違うんです。ダンスフロアがあって専属バンドが演奏する、そういうお店で歌っていました。昭和によくあったナイトクラブのスタイルで、いまだに地方には当時のスタイルのお店がいくつか残っていますね」

――プロの歌手になるために芸能事務所主催のコンテストやテレビオーディション番組に出るのはありがちなパターンですが、そうしなかったのはなぜですか?

太良「高校を卒業するときに進路をどうしようかと考えて、出した答えが〈歌がやりたい〉だったんです。そう決意した直後にナイトクラブの専属シンガーのオーディションがあることを知って、だったら参加してみようかなと。運よく合格して〈卒業したら春から来て〉と声がかかり、働き始めました」

――そうしたキャリアは現在の太良さんの血となり肉となっているような気がします。

太良「10代から貴重な体験ができたっていうのはすごく感じます。おかげで昭和歌謡やジャズ、海外の古い歌を知ったり学んだりできました。ナイトクラブは私のホームのような場所です」

――みなさんは今までまったく違う道を歩んできたのですね。驚きました!

全員「そうなんです。みんなバラバラなんです(笑)」

 

絶妙な昭和感とかわいさが融合した“DING DONGください”

――それではこのあたりで最新ミニアルバムの『DING DONGください』について質問させてください。タイトル曲のセールポイント、もしくは聴きどころを教えていただけますか。

太良「やっぱりサビがキャッチーということでしょうか。前作『愛のバッテリー』からちょっと大人の女性になった感じもあるよね」

かのう「うん、そうだね。しかも思っていたよりもダンスパートがあって、その点も魅力になっているのかな?」

MAKOTO.「初めて聴くと〈はてなマーク〉が頭に付く歌詞にも注目してください(笑)。〈今、なんて言ったの?〉と思うような、引っかかるフレーズが多めなんですよ」

――日本語の歌詞を書いたのはヒャダインさん。彼ならではのワードセンスですよね。

MAKOTO.「そうなんです。普段使わないような言葉がたくさん入っているんです」

太良「例えば〈甘いフェロモン ムンムンよ〉、〈甘い言葉で シュワシュワよ〉って、日常生活の中で絶対言わないですよね(笑)。でも歌ってみると絶妙な昭和感が漂ってくる。そこがいいんです」

かのう「いやらしさがないのもいいよね」

MAKOTO.「それは私たちが歌うからかもしれないよ。だって私たち、かわいいから(笑)」

 

名曲を自分なりに解釈する難しさに挑んだソロカバー曲

――カップリングのソロ曲も魅力的です。いずれもカバーソングですね。

かのう「私が歌った“瑠璃色の地球”(1986年)は地元・福岡の大先輩である松田聖子さんの曲です。今の自分の気持ちを重ねられる歌詞とメロディラインだったので選びました」

――「トロット・ガールズ・ジャパン」の関連公演ですでに披露している曲なので、レコーディングはスムーズだったのではないでしょうか。

かのう「いや、そんなことは全然なかったです。実はキーを原曲よりちょっと上げているんですよ。そのほうが私の声に合っていて魅力を引き出せるので、がんばってくれと言われて。それでだいぶ練習しました。おかげで今は楽に歌えます」

――MAKOTO.さんの“涙の太陽”は安西マリアの歌唱で1973年に大ヒットした曲です。

MAKOTO.「周囲の方々が思う私のイメージって、この曲に近いんじゃないかなと思ってセレクトしました。とはいえ、誰もが知っている歌なのでアプローチの仕方が難しかったです。あと大変だったのがダブリング(同じフレーズや音色、歌を重ねる手法)。私の声を重ねるとピッチがまったく同じで変な感じに響いてしまうんです」

――ダブリングは声の微妙なズレを生かすためのものですからね。

MAKOTO.「そうなんです。ズレが面白いのにまったく同じ。だからレコーディングスタッフが意図的に少しずらしたバージョンにしてくれたんです」

――言い換えれば、それだけ歌が正確だということですよね。

MAKOTO.「ありがとうございます!」

――太良さんは鈴木聖美 with Rats&Starの“TAXI”(1987年)をカバーしていますね。どういう経緯で決定したのでしょうか。

太良「この曲に関しては以前から私のボーカルに合うんじゃないかと言われていたんです。それでセレクトしました。鈴木聖美さんは低音で太い声ががーっと前面に出る。私の場合、そのスタイルを意識しすぎずに違う歌い方も混ぜてみたいと思ったんです」

――オリジナルに寄せすぎてはいけない、と。

太良「はい。あと、歌詞の内容も選曲する上で基準のひとつでした。“TAXI”の世界観っていいなと思ったのも選んだ理由です」

――あさ陽さんは杏里の“オリビアを聴きながら”(1978年)をセレクトしていますね。

あさ陽「もともと歌いたいなと思っていた曲だったんです」

――この曲はメロディに起伏があるので、歌いこなすのが難しそうですね。

あさ陽「難しかったです。歌詞を自分なりに解釈してレコーディングに臨んだんですが、あるフレーズを穏やかに歌ってみたら〈もうちょっと強く出して〉と言われたりして、表現のバランスが途中で分からなくなってしまったんです。でもめげずにがんばった結果、あのようなバージョンに仕上がりました。

あとは英語。私、発音が下手なんです。おまけにピッチも難かしくて」

――先ほど太良さんが言っていましたが、ただ単に原曲のように歌えばいいってわけじゃないですよね。

かのう「そうなんです。自分なりのテイストを入れないといけないのが難しいなって思います。原曲をそのまま歌うと、カラオケのお店で歌っているようになってしまいがちです。だからカバーソングをリリースするのは本当に怖い!」

太良「同感です。オリジナルと比べられちゃうのは本当に怖いですよね」

 

いつかオリジナル曲を出して、世界で活躍できるグループへ

――ミニアルバム『DING DONGください』のリリースイベントをタワーレコードで開催したそうですが、やはりファンと直接ふれあうのは楽しいですか?

あさ陽「前作『愛のバッテリー』のプロモーションのときは、どの会場でも盛り上がってくれました。私たちの歌声に負けないくらいの音量で一緒に歌ってくださったんです」

太良「掛け声もすごかったよね!」

かのう「『DING DONGください』を披露したときは、出だしに入る効果音の〈ピンポン〉や〈ドンドン〉も言ってくれるんですよ(笑)」

――sisのファンはなかなかユニークですね。

かのう「本当に面白い方が多いんです!」

――ところでsisの目指すグループとしての理想・目標は何でしょうか?

MAKOTO.「私たちは世界中のヴィンテージソングを歌い継ぐというコンセプトで活動しています。それと並行してsisのオリジナルソングを出したいと思っています。着実にステップアップして、日韓のみならず世界のいたるところで活躍できるグループにしていきたい、それが当面の目標です」

 

sisにとって音楽とは?

――最後の質問になります。あなたにとって〈音楽〉とは何でしょうか?

全員「ああ、これは難しい!」

MAKOTO.「今、脳内が『IPPONグランプリ』状態になってる(笑)」

あさ陽「じゃあ、まずは私から。音楽は〈友だち〉です。今は歌うことが仕事になっていますけれども、プライベートの時間でもピアノを弾いたり、歌ったり、曲を書いたりしています。だから趣味も音楽。音楽がいつも寄り添ってくれる。励ましてくれるときもあるし、泣かせてくれるときだってある。となると、友達と同じような存在なのかなって。そう思います」

MAKOTO.「最後に答えるのは嫌だから、先に言いますね(笑)。私にとって音楽は〈着火剤〉みたいなものです。振り返ってみると、自分の心に火をともしてくれるのはいつも音楽でした。嬉しいときも悲しいときも必ず音楽を聴いていたような気がします。

病んでるときに音楽を聴くとどんどん落ち込んでしまうときってありますよね。K-POPアイドルを目指して練習生になったときはまさにそうでした。それでも音楽を手放さなかったんです」

かのう「今いろいろと頭に浮かんでいて、どれにしようか悩んでいました(笑)。私にとって音楽とは……。最初に思いついたのは、〈居場所〉でした。幼少期から歌をやってるので、途中で辞めたいと思ったこともありました。でも、どんなにつらくても嫌なことがあっても、結局は音楽に戻っていく。だから帰るところ、すなわち居場所じゃないかと思いました」

――かのうさんはメンタル面が安定している印象がありますが……。

かのう「13歳の頃だったかな。中学生時代にそれまで続けてきた音楽があまり楽しくなくなってきたんです。親に怒られてやらされている宿題のような感じになったというか。そのあたりがいちばんネガティブなときで、生きている感じもしませんでしたし……。

でもコロナ禍で自分と向き合う時間ができて、自分がどんな音楽を発信してどういう人でありたいのかを考えました。そして『トロット・ガールズ・ジャパン』で自信がついてからは、おかげさまで幸せな日々を過ごしています。精神的な支えになったのはファンの存在ですね。救われたなっていう気持ちでいっぱいです」

太良「私は、音楽は〈心〉かなと思っていて。とにかく音楽は明るかろうとダークだろうと心が入っていなければダメなんじゃないかなっていう意識があります。だから〈心〉にしましたー」

あさ陽「何? 最後の投げやりな感じは(笑)」

太良「いや、やっぱりこの質問で最後に答えるべきじゃなかったって後悔しちゃって(笑)」

――いずれのコメントも音楽に対する真摯な思いが伝わってくるものでした。今後の活動を期待しております。本日はありがとうございました。

全員「ありがとうございました!」

 


RELEASE INFORMATION

sis 『DING DONGください』 コロムビア(2025)

リリース日:2025年7月23日(水)
品番:COCP-42507
価格:2,500円(税込)
配信リンク:https://sistgj.lnk.to/DINGDONG0723
produced by ヒャダイン

TRACKLIST
1. DING DONGください
2. 瑠璃色の地球/かのうみゆ
3. 涙の太陽/MAKOTO.
4. TAXI/太良理穂子
5. オリビアを聴きながら/あさ陽あい
6. DING DONGください(Korean ver.)
7. DING DONGください(Instrumental)

 

EVENT INFORMATION
『DING DONGください』(CD)発売記念ミニライブ&特典会@タワーレコード川崎店

2025年8月23日(土)タワーレコード川崎店 店内イベントスペース
開演:14:00
詳細:https://columbia.jp/artist-info/sis/live/90960.html

 

LIVE INFORMATION
「DING DONGください」リリース記念ワンマンツアー ~あなたの街まで~

2025年8月16日(土)愛知・名古屋 ビジュアルアーツアカデミー
2025年8月17日(日)大阪・心斎橋 OSAKA RUIDO
2025年9月13日(土)東京 神田明神ホール

 


PROFILE: sis
韓国で絶大な人気を誇る音楽ジャンル〈トロット〉をテーマに新たな歌姫を発掘するオーディション番組「トロット・ガールズ・ジャパン」で発掘された歌姫たちから誕生した新ユニット〈sis〉(読み:シス)。プロデューサーは、ももいろクローバーZや私立恵比寿中学などを手掛けてきたヒャダインが担当する。sisのメンバーは、かのうみゆ、MAKOTO.、太良理穂子、あさ陽あいの4人で構成され、全員がオーディション番組「トロット・ガールズ・ジャパン」の準決勝以上に勝ち残ったメンバー。グループ名の〈sis〉は、英語でお姉さん、仲の良い女友達という親しみやすい意味を持つ〈sis〉と、フィンランド語で勇敢な折れない心を表す〈SISU〉から命名された。 メインロゴには〈トロット〉出身を意味する〈/T〉も表記されている。強い心を持ちながらも隣で優しく癒してくれるような存在、そして世代や国境を越えてVintage Musicを歌い継ぐグループを目指す。
Official Site:https://sis.fanpla.jp/
Official SNS:https://sistgj.lnk.to/sis