2022年より活動する湘南発の女性シンガー・ソングライターのファースト・アルバム。トレンドに寄せずゆったり奏でる45秒のイントロを経て〈上等な武器など持たずして 私はこの身一つで戦える〉と切り出す冒頭“三、四分のうた”から、飄々としながら低音や抑揚が豊かな、マイノリティーの心をほぐす温かな声に、一瞬で惹き込まれてしまった。高田渡に通ずる牧歌的なフォーキーさがあり、うるさい外野に中指を立てる“きれいなおじさん”のような鋭くアヴァンギャルドな魅力もある。何かしらの葛藤を抱えた人に届いてほしい曲ばかり。歌とギターだけなのに、ずーっと聴いていたい。