2024年末の特別企画として、タワーレコードのスタッフが選ぶ2024年マイベスト邦楽アルバムをお送りします。各店舗や本社のスタッフが、今年の邦楽アルバムの個人的なお気に入りを選んでコメントしました。同趣旨の〈2024年マイベスト洋楽アルバム〉〈2024年マイベストレコード〉も、ぜひあわせてチェックしてください。 *Mikiki編集部

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任(渋谷店)

藤原さくら 『wood mood』 Tiny Jungle(2024)

初めて聴いた時、とても心が震えてました。

イントロのフィールドレコーディングで響く鳥の鳴き声から、心に染み渡る落ち着いたトーンの声、そして密かに絡み合うドラムとピアノの掛け合いまで、全体のハーモニーが調和し、途轍もない世界観が作り上げられていると感じました。まるで自分がミステリアスな暗闇の森の中にいるかのような感覚。その森は心の反映のようで、とても内面的ですが、どこか暖かい光が森の中に差し込み、包み込まれるような感じです。2024年に私の心の奥深くまでに響いたアルバムだと思います!

 

F.H(水戸オーパ店)

Cody・Lee(李) 『最後の初恋』 キューン(2024)

〈生活〉をテーマに歌うCody・Lee(李)が手がけるメジャー2ndフルアルバムです。なんと言っても、Cody・Lee(李)の魅力といえば、日常を感じさせる愛の深い曲たち。フジファブリックをはじめ、メンバーたちが様々なアーティストから影響を受けており、幅広いジャンルの曲を楽しめるアルバムになっています。

最初に収録されているのは、ライブのSEでも使用されている“NOT WAR, MORE SEIKATSU”です。聴く度に、ライブが始まる前の〈わくわく感やどきどきする気持ち〉になります。“真夏のジャイガンティック”は、爽やかなサマーソングで、私は海辺をドライブしながら聴きたくなる曲です。”1096”は、ボーカル高橋響さんが高校生の時に作った曲で、今まで過ごしてきた日々や大切なものを思い出させてくれる曲です。この曲は、〈こnにちは せいかつ。TOUR〉で初披露され、私も思わず涙をこぼしてしまいました。何より高校生の時に書いた曲が何年もの月日を経て、こうしてリリースされたことがとても感慨深いです。最後に収録されているのは、“生活”です。私たちにとって生活とは何か見えてくると思います。ずっと生活を歌い続けるCody・Lee(李)らしい作品です。

このアルバムを一言で表すならば、私たちの生活に寄り添ってくれる1枚です。私もこのアルバムを聴いてCody・Lee(李)の音楽に何度も救われました。

『最後の初恋』を引っさげてのツアー〈I want to be a flower〉は、全13公演完走し、来年はメジャーデビュー3周年を迎え、日比谷野音でのワンマンライブの開催が発表されました。日本に止まらず海外でも人気を集め、軌道に乗るCody・Lee(李)にご注目ください。

 

松本健太(渋谷店)

井上園子 『ほころび』 Pヴァイン(2024)

全編弾き語りの一発録りでレコーディングされた、井上園子のファーストアルバム。

彼女の楽曲を聴くと、どこか懐かしい気持ちを思い出させてくれるような気がします。“おいしい暮らし”や“カウボウイの口癖”を聴いていると、彼女と同じ感性を持った日本人に生まれてきてよかったな、と愚直にそう思えます。特にこの2曲は、彼女を取り巻くあたたかな家庭環境や身近な人間関係のなかで生み出された楽曲なんだろうな、というワードが随所に散りばめられています。なぜ彼女の歌に懐かしさを感じるのかを考えたときに、生まれ育った家庭環境のほかに、幼い頃に自分から見た祖父や祖母世代の人の、大胆さや懐の大きさみたいなものに似ているからなのかもしれない、と感じました。

“人ばかりではないか”は、思い通りにいかない日々でも懸命に生きようとする私たちの応援歌のように聴こえます。情報過多で混沌とした世の中を生きなくちゃいけない私たちにとって、アコースティックギター一本で紡がれたこの歌は、何より味方でいてくれる気がするし、私たちに絶対に必要な音楽です。

昭和からタイムスリップしてきたような楽曲のセンスと、時折聴こえる語り口調のような歌唱は、日本のフォークソングや歌謡曲を彷彿させ、なんだかあたたかい気持ちになります。個人的には、カネコアヤノが好きな人にもぜひ推薦したい一枚。9曲入りで56分という大作は、間違いなく今年のマイベストアルバムだと断言します!!! これからの活躍に期待しかないです!!!!

私の推薦曲は、②③④⑧⑨です!!!

鈴木孝彦 『血流』 GardenNotes Music(2024)

私のエゴであることは重々承知の上で言わせてほしい。これは〈ロック〉な作品だ。

“血流”のイントロが流れた瞬間、わずか15秒で完全に心を掴まれてしまいました。鳴っているのは確かにピアノだけですが、他の楽器とのアンサンブルをしているかのように聴こえてくる、リズミカルで怒涛の演奏。

北海道の名寄市でレコーディングされた今作は、暑い夏でも思わず外に飛び出したくなるようなリズムとメロディーが印象的な“aqua garden”、ふと空を見上げて、キラリと輝く星たちに想いを馳せたくなるような“名前の無い星”など、その自然豊かな風土や情景も窺える全5曲を収録。ジャンルの垣根を超えて色々な方に聴いて欲しいですし、人々の心に響く作品であると確信した一枚。

個人的な話にはなってしまいますが、この作品をストアプレイで流した瞬間に、〈これは自分がコメントを書かなきゃいけない作品だ!!〉と、直感で使命感みたいなものを感じました。タワーに入社して初めて新譜のコメントを書きたいという熱意を伝えて書かせてもらった、記念すべき作品でもあります!! また、TOWER CLASSICAL SHIBUYAにて私が立ち上げた企画コーナー、〈マツモトチョイス〉でも展開中です!!

私の推薦曲は、①②⑤です!!!