新たな才能が続々と登場している日本の音楽シーン。サブスクやショート動画が全盛期の今、その数もスピードもますます上がっていると言えます。そんな2025年の年始企画として、Mikiki編集部が選ぶ今年注目の新人邦楽アーティストを前後編に分けてお届け。編集部員の紹介文や楽曲をぜひチェックしてください。この記事が新たな出会いの一助になれば幸いです(前編はこちら)。 *Mikiki編集部


 

小田淳治 編
雪国

3人全員が2003年生まれ、しかも結成は2023年。プロフィールだけ見たらとにかくフレッシュなバンドだが、その丁寧な作り込みにただならぬ気配を感じた。2024年にリリースされたフルアルバム『pothos』、そして出たばかりの1st EP『Lemuria』とすべて音がいい。叙情的なギターロックに取り組む優れたバンドはたくさんいるが、そうしたカテゴリにおいて雪国は録音物として近年ダントツのクオリティを誇っている(出音、音作り、録音方法などあらゆる面で抜群)。ナカコー(中村弘二)や川谷絵音らもプッシュしているだけに、瞬く間に羽ばたいていくと思う。

 

x0o0x_

ニコニコ動画にて幻想狂気系の楽曲を得意とするx0o0x_。〈ワカメ〉と呼ばれているそうだが、それも便宜上のものであって正式かどうかは不明……と、この時点で興味津々だ。打ち込みをベースにしたゴシックなサウンド、転調が多発する先を読ませないトラックメイク、まふまふほど張り上げない線の細い独特なウィスパーボイスと中毒性が高い。都市伝説をモチーフにするなど作品を練り上げる力に秀でていて、昨年リリースの2枚組『人形 - ふたりきり』、そしてクリスマスに合わせた最新曲“ハッピー内蔵ケーキ”でもその力を存分に発揮している。片やAKASAKI“Bunny Girl”を歌ってみたりと、現行の音楽シーンとも時折繋がるあたり常に目が離せない存在です。

 

Leina

“うたたね”がバイラルヒットを記録し、その勢いが韓国にも波及して 〈WONDERLIVET 2024〉に出演するなど話題を集める19歳のシンガーソングライター。1stアルバム『愛の産声、哀の鳴き声』(2024年)を一聴して感じたのは、同年代の世界的なポップスターたちと同じ感覚で心情をポップスへと変換しているところ。ビリー・アイリッシュやオリヴィア・ロドリゴのように、Leinaもその世代特有の眼差しで世界を見ているのだろう。鬱屈した日常をギターロックなサウンドに乗せて吐き出す“Hard Work”、どことなく童歌のような節がクセになる“食わず嫌い”あたりを聴いても彼女の眼光の鋭さを感じることができる。あいみょんが人気の韓国でリスナーに刺さっているのも納得。

 

Peterparker69

2022年に結成された2人組ユニット。彼らを知ったのは2人がJeter & Y ohtrixpointnever名義で発表した“FANTASMA feat. SEEDA”を耳にしたタイミング。ライアン・ヘムズワース界隈(テニスンとは“skyskysky”でコラボ済み)を連想させ、ハドソン・モホークやカシミア・キャットにも似た雑多と洗練を行き来するようなトラックメイキングは人によって好みが分かれるかもしれないが、自分は大好物。ロンドンのデュオ、トゥー・シェルと組んだ最新曲“Magic Powers”も単なるクラブチューンというよりはハイパーポップなども飲み込んだハイブリッドな良曲。ミックス/マスタリングがPAS TASTAのphirtzという点も注目ポイント。

 

Beachside talks

東京を拠点に活動する4人組ドリームポップバンド。大学サークルで組んだ相対性理論のコピーバンドからスタートしているとのこと。コクトー・ツインズなどを意識した傑作『Marble Town』(2023年)に魅了され、2024年にリリースされた4曲もそれぞれベクトルは異なるがバンドとしてスケール感が増した印象を受けた。その中で特にプッシュしたいのは“Big Sky”。スーパーカーを想起させる青さ、リバーブのかけ具合など高揚する部分が多々ある。韓国のパラノウルが世界的に高く評価されていたりと、この手のジャンルは幾度となく最盛期を迎えるので、Beachside talksもその波を逃さないでほしい。いや、むしろ波を起こしてもらいたい。