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ひとつ夢が叶ったら

 そして、ネットで活動するうえで避けられない否定的な声の存在を「そういう人たちがいるから自分も強くなれた側面があるので、それを肯定するでも否定するでもなく、自分の思っていることを素直に謳った曲」だという真島ゆろ作の“ライクとヘイト”、「初期の頃は〈自分らしさ〉がわからなくてもがいていたけど、ファンの人たちのコメントを見て、自分にどんどん自信を持つことができて。〈自分らしさ〉を教えてくれたのは、自分より自分のことを好きになってくれるファンだったな、という気持ちを込めてもらいました」と語る40mP製の端正なミディアム“Re:flection”と、より核心に迫る楽曲を経て、アルバムのラストに置かれているのが、昨年から温めていたというタイトル曲“flower rhapsody”。こちらは堀江晶太が詞曲を担当し、堀江とはPENGUIN RESEARCHの盟友でもある神田ジョンが手掛けたオーケストラルなアレンジの壮大さも相まって、祝福感の広がる印象的な仕上がりだ。

 「テーマは〈今のみこから過去のみこへ〉。35Pへの気持ちは“Re:flection”で歌っているのに対して、この曲は自分に向けて歌った部分が強いです。堀江さんに〈過去の自分に何かを伝えるなら?〉と質問されたとき、みこがあれこれ考えて辿り着いたのは〈大丈夫だよ〉というシンプルな言葉で。いままで大変なこともあったけど、そのひとつひとつが全部みこに繋がっているし、そこを捨てないで生きてこれたんだなって思ったんです。特に〈今も 迷うよ 今も 悔しいよ でも わたし、わたしでよかったよ〉と素直に言う歌詞がすごく良いし、〈終わらない 不思議を 掴むための てのひら〉の〈てのひら〉も、“サクラカゼ”の振付けで桜を表現するときに手のひらを重ねることに繋がっていて、気づいたときに鳥肌が立ちました(笑)。アルバムやライヴのコンセプトもこの曲があってこそなので、みんなに届いてほしいです」。

 10月26日に開催される初ソロ・ライヴに向けて、いろんな〈自分らしさ〉を見つめ直すことで生まれた『flower rhapsody』は、さくらみこというVTuberの軌跡と生き様を、無闇に象るのではなく、そのまま表現した作品と言えるだろう。

 「みこも昔は〈自分らしさ〉をひとつの言葉にまとめなくてはいけないと思っていたけど、それは違うなと思って。いろんな一面があっての自分だから、いろんな自分を認めることがすごく大事ということに気づけました。いま、毎日が楽しいんです。〈人の夢は終わらねぇ!〉っていう名言(『ONE PIECE』の黒ひげのセリフ)はその通りで、ひとつ夢が叶ったら、今度はもっとこうしたいっていうのが出てきて、次のアルバムで歌ってみたい曲もどんどん増えていって。なのでもっと夢を叶えていけるように、欲張って長生きしようと思います(笑)」。

参加クリエイターの作品を一部紹介。
左から、いきものがかりの2024年のシングル『晴々!/青のなかで』(エピック)、じんの2022年『アレゴリーズ』(ユニバーサル)、かいりきベアの2020年作『ベノマ』(Subcul-rise)、PENGUIN RESEARCHの2024年のシングル“Fire and Fear”(SACRA MUSIC)