2021年に転落事故で亡くなったソフィーの未発表アルバムとなる本作は、生前に残していた素材を彼女の実兄が調整して作られたもの。そのため、生前に発表された作品と比較すると、完成度の点では至らないところがある。とはいえ、2018年にCrack誌のインタヴューで彼女が示した〈主流の音楽は排他的ではないしエリート主義でもない〉という視座に基づく音は十分に魅力的だ。重低音が鳴り響くエレクトロニック・ミュージックの数々は、親しみやすい旋律を時折奏でながら、定型から外れんとする奇特なアレンジも忘れない。大衆性と先鋭の共立は可能だと教えてくれる一枚。