安室奈美恵の多面性を見せつけた“NEW LOOK”

TWICEのMINA、SANA、MOMOによるユニットMISAMOが2024年11月6日(水)にミニアルバム『HAUTE COUTURE』をリリースすることが発表された。先んじて、収録曲“NEW LOOK”の配信がスタートしている。もともとTWICE内の日本出身のメンバーで結成されたMISAMOだが、とりわけ“NEW LOOK”はあの安室奈美恵の名曲のカバーということもあり、日本国内では大きな話題となっている。

MISAMO 『HAUTE COUTURE』 ワーナー(2024)

原曲である安室奈美恵の“NEW LOOK”は、2008年にリリースされたシングル『60s 70s 80s』に収録された一曲。このシングルはタイトル通り、それぞれの時代をリバイバルさせた3曲から構成されており、“NEW LOOK”のテーマはズバリ60年代。黄金期のモータウンを支えた伝説的なコーラスグループ、ザ・スプリームスの楽曲“Baby Love”をサンプリングしており、TKサウンド期とヒップホップ/R&B期のいずれとも違うサウンドは、安室奈美恵のポップアーティストとしての多面性を見せつけた曲だ。ヴィダルサスーンのCMとセットで記憶している30オーバーの人も多いのではないだろうか。安室奈美恵の楽曲は現在ストリーミングでは聴くことができず、気軽にシェアできないのが何とも歯がゆいところではあるが、何とかしてCDなどで聴いてほしい。

安室奈美恵 『60s 70s 80s』 avex trax(2008)

安室奈美恵 『BEST FICTION』 avex trax(2008)

 

モダンなデザインと風通しの良いアレンジによるMISAMOのカバー

そしてMISAMOの“NEW LOOK”は、トラックは音数を間引いたスマートなドラムとベースで低音のデザインを一新しつつ、MISAMOのクセのない歌声が原曲のムードを損なうことなく、風通しの良いアレンジとなっている。もし安室奈美恵が今も現役で、この曲をセルフリメイクしていたら、このようなモダンなヒップホップアレンジになっていたのではないか、とも想像できる。

(今回、改めてMISAMOカバーと原曲を繰り返して聴き比べる中で、〈シネマの中のTwiggy……〉という長いセンテンスのリフレインをしつこく繰り返す、バースをそのままフックにしたようなオリジナルの曲構成のユニークさに気づかされた。まるでBUDDHA BRAND“人間発電所”のような……)

 

〈裏方〉によるレベルの高い仕事を示すMV

MVにも注目したい。2008年と2024年という2つの時代、更に、その2つの時代ごとにそれぞれ演じられる〈60sリバイバル〉という、入れ子構造が対になった時間軸の中で展開する、メタな構成。

圧倒的なスターとそれを支える現場のスタッフ=〈裏方〉たちも仕事着のままダンスに加わり、レトロ/モダンの時間軸が混じり合い、虚実一体のダンスショーが始まる……この演出もまた、原曲のMV~安室奈美恵とともに、メイキャッパーやスタイリストを模したダンサーたちが躍るという、オリジナルへのオマージュだろう。

アイドル本人のパフォーマンスや楽曲のクオリティはもちろん、カメラやスタイリストといった〈裏方〉にもレベルの高い仕事を要求しているからこそ、K-POPは高い人気を保っている――アーティストと裏方が同じように踊り始める原曲“NEW LOOK”のMVの世界観は、このことを示すのに確かにぴったりなコンセプトだ。

ちなみに原曲“NEW LOOK”の衣装はファッションデザイナーのパトリシア・フィールドが手掛けているが、MVにもカメオ出演している。これもまた〈裏方〉へのリスペクトだろう(パトリシアは「セックス・アンド・ザ・シティ」「プラダを着た悪魔」などの衣装も手掛けており、裏方というにはビッグネーム過ぎるが)。