多様な音楽取り込む〈ウィーンのジャズ〉
ウィーン在住の日本人ジャズピアニスト、菅原みれいが結成した〈Mireis Trio〉のデビューアルバム『All Original』が注目されている。収録曲はすべて自作曲。クラシック音楽の本場であるウィーンでジャズを演奏している点も興味を引く。菅原本人に話を聞いた。
「3歳でピアノを始めて以来ずっとクラシックを勉強しました。ウィーンでなぜジャズ?とよく聞かれますが、私はまずクラシックで有名なウィーン国立音楽大学を卒業し、ウィーン市立音楽院(現ウィーンコンセルヴァトリウム私立音楽大学)のジャズ科に行きました。ウィーン国立音大での師であるアレクサンダー・イェンナー先生は日頃から即興が大事だと言っていたので私の選択に理解を示してくれましたが、まさかジャズに行くとは思っていなかったかもしれません」
今作は菅原が書きためた自作曲を集めた。菅原の曲や音楽性を語る上で欠かせないのが〈多様性〉。自由で幅広い表現力、美しく流麗なサウンドが独特の個性を生む。
「私は作曲科出身でないので作曲は独学。CDは必死にジャズをやって曲をどんどん作ってきた結果です。これまで私が見たり感じたりしてきたことを凝縮し、音にしました。自然と日本の曲の旋律などを使う一方、ショパンなどクラシック作曲家のフレーズなども引用します。今回のアルバムでも沖縄音楽からイメージした曲“Shisa’s Swing”が入っています。CD録音をしたトリオはウィーンが拠点なのに全員出身国が違い、各地の音楽なども自然と盛り込まれて面白かったです。私のジャズは〈ウィーンのジャズ〉と形容されますが、確かにアメリカのジャズとは違う知られざるジャズではあります」
ジャズに興味を持ったきっかけは、「即興がやりたい」という強い思いだった。
「ジャズギタリスト、ジョン・ピザレリのライヴを聴いたことで即興に興味を持ちました。クラシックはまず作曲家の意図を再現する芸術ですが、ジャズは即興で自己を表現する。初心者だったのでブルースやスタンダードの基本を徹底して学びました。ピアノ1台でどこまで自分を表現できるかを常に考えています。ウィーンの人々はクラシックが好きなイメージがありますが、ジャズの即興も好き。新しいことを好みます。音楽はジャンルの壁がどんどんなくなっています。私もピアノを生かせる道があれば、どんなジャンルの音楽でも取り込みたい。今後はウィーンを拠点にしつつ、日本などでももっと演奏したいです」
LIVE INFORMATION
菅原みれい公演情報
2025年7月4日(金)ルネこだいら レセプションホール
開演:19:00
その他ライヴ情報は公式ホームページにて随時更新
https://www.mireisugawara.com/