ステファン・マクラウドが、自身を含む5人の精鋭歌手による各パートひとりでの編成で臨んだブクステフーデの傑作。独唱者の個性的な歌唱と古楽器の響きが混じり合った神秘的な演奏で、十字架上のキリストの身体の部分部分について謳った特異なテキストを持つこの連作カンタータが音画的に表出されていく様は、まるでバロック時代のイエス・キリスト受難の連作宗教絵画のように鮮やか。この作品の対として新たに作曲された現代音楽との対比にも注目したい。古今の名盤ひしめく同曲録音の中でも傑出した録音となること必至の名歌唱だ。