
オーディエンスの思いを知るのは難しい
――7曲目の“ゆめみなとタワー”は昭和歌謡や演歌をよく聴いていた時期に作った曲とのことですが、イントロの音像から雰囲気があっていいですね。
オオトシ「ありがとうございます。昭和歌謡や演歌ってイントロを聴いただけで〈○○年代の曲やろうな〉って分かるじゃないですか。同じように、イントロから歌い出しまでの間にこの曲の持つ雰囲気が伝わるように意識して作ったので、そう言ってもらえて嬉しいです。
12月のワンマンで演奏した時は、セトリの中の〈聴かせるゾーン〉に配置したんですよ。お客さんの顔を見ながら、ちゃんとみんなを引き込むことができる曲になったなと思いました」
金井「ワンマンは僕も観させてもらったんですけど、この曲が一番のハイライトだったと思います。バンドの作る心地よい波がお客さんにもちゃんと伝わって、会場全体が飲み込まれていました。
ステージに立ってお客さんと向き合っていると、やっぱり目に見える形で盛り上がる方法を選択したくなる瞬間があると思うんですよ。でもステージ上から〈ちゃんと心に沁みてるな〉って判断するのはすごく難しいんです。だから、もしも3人が〈盛り上がってないな〉と勘違いしていたら、あとで〈そんなことない〉とちゃんと伝えようと思っていました」
オオトシ「確かに、お客さんがどう思っているか現在進行形で分からないと、ちょっと不安になることもあります……」
金井「今の時代こういう曲ができるバンドって稀有だと思うし、本人たちが思っている以上にバンドにとって大事な側面になっていくんじゃないかと予感しています」
――アルバムのラストを飾る“幸せ者なの”についてはいかがでしょう? 作曲のクレジットがオオトシさんではなく、バンド名義になっていますね。
オオトシ「アルバムの中で唯一、スタジオに入ってせーので作った曲です。アルバムに収録する曲がいくつか決まり始めて、〈あとはどんな曲が必要だろう?〉と考えていたタイミングで、金井さんと一緒にスタジオに入る機会があって。歌詞以外はその場で話し合って決めたんですけど、そういう作り方をしたのは初めてでした。私たちにとっての新しい挑戦であり、今のバンドの力が詰まっている曲です」