Page 2 / 3 1ページ目から読む

受け入れられなくても許してほしい

 梅原は今回、地球上で陸地からもっとも離れた場所のため人工衛星の落下目標地点として知られる海〈ポイント・ネモ〉になぞらえて〈残骸に塗れた墓場から 俺が引き摺り出してやる〉と力強いメッセージを込めた“ポイント・ネモ”を作詞・作曲しただけでなく、煽情的なサウンドと古語を多用した歌詞が雰囲気たっぷりな“御免あそばせ”の作詞を担当。一方の中島は〈ありふれた ラブソングそんなんじゃ 何も変わらない〉というフレーズも印象深いシリアスなアップ“to start over”、その逆に爽快なラヴソング“らしくないかもな”を作詞している。

 「“ポイント・ネモ”はもともと、ライヴで楽できるように音のレンジが広くない楽曲を作ろうと思ったのが始まりで。いままでの歌詞は一人称視点でジメジメしたところが多かったので、むしろそういう人を引き上げる視点で歌詞を書きました。“御免あそばせ”は桑原さんから〈SNSでバズるような歌詞を書いて〉という難しい注文があったので(笑)、個人的に好みである古風な言い回しで強めの言葉を使って、一見すると荒唐無稽に見える内容にしつつ、いままで書いた歌詞のなかではいちばんメッセージを込めたつもりです。きっと誰にも伝わらないと思いますが(笑)。いろんな解釈をして楽しんでもらえたらと思います」(梅原)。

 「僕は今回の2曲に限らず、自分の実体験ではなく物語を書くようなイメージで作詞するのですが、“to start over”は〈start over〉に〈to〉が付くと〈恋人同士の復縁〉という意味があることを知ったので。Xで見かけた、〈どうして男性は元カノがずっと自分を好きでいると思ってるんだろう?〉というポストから想像を膨らませて書きました。“らしくないかもな”はデモをもらったときに〈桑原さんらしくないな〉と思ったので、じゃあ〈らしくない〉曲にしようと思って、あえて僕と梅原くんが普段は絶対に歌うことのない青春ラヴソングにしました。僕たちの性格を知っている人にはギャグに聴こえると思います(笑)」(中島)。

 「“home”は僕が作詞しているのですが、Sir Vanityにはこういうチルい音楽が今までなかったので、聴いた瞬間に〈僕が歌詞を書きます〉って手を挙げました。サバっぽいかっこいい曲は梅原さんやヨシキくんに任せて、それはもうサバのDNAになっていると思うので。これまでに作詞した“finder”もそうなんですけど、僕はこれまでになかった深みや広がりを持たすために、こういう曲では作詞の方面から率先して世界観を作っていければと思っています」(渡辺)。

 「どの曲も違った魅力があるので、自分はどれもSir Vanityとしての許容値だと思っているけど、みんなはどう感じるのか気になりますね……まあ嫌だと言われても許してもらうんですけど(笑)」(桑原)との言葉通り、ヴァラエティー豊かな楽曲でバンドの可能性を拡張した今回のミニ・アルバム。華も実力も備えた4人が道楽で始めたがゆえの余裕と遊び心に満ちた、うぬぼれと色気たっぷりなSir Vanityのロックを聴いて、ぜひ自分の許容値を確かめてみてほしい。

Sir Vanityの作品。
左から、2022年作『Ray』、2023年のミニ・アルバム『midnight sun』(共にVanity)

メンバーの近年の関連作を一部紹介。
左から、梅原裕一郎が声優として参加したBeitの2024年作『THE IDOLM@STER SideM 10th ANNIVERSARYa P@SSION 04 Beit』(ランティス)、2017年のトリビュート盤『Shizuka Kudo Tribute』(ポニーキャニオン)、中島ヨシキが声優として参加したS.E.Mの2024年のシングル『THE IDOLM@STER SideM CIRCLE OF DELIGHT 15 S.E.M』(ランティス)、桑原聖が音楽プロデュースを手掛けたKnightsの2024年作『あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ 「TRIP」』(Happy Elements)、渡辺大聖がライヴ演出などを担当したすとぷりのベスト盤『Strawberry Prince Forever』(STPR)