人気声優を含む各界の才人がロック・バンドとして集合! ルールやしがらみから解き放たれた〈うぬぼれ屋さん〉たちの新ミニ・アルバム『Latitude』は、リスナーの耳と感性をテストする!!!!
自由な表現をできる場所
声優として多数の作品に出演してきた梅原裕一郎と中島ヨシキ(共にギター/ヴォーカル)、音楽制作チーム・Arte Refactの代表で作曲家としても知られる桑原聖(ベース)、ライヴ制作などを手掛けるクリエイティヴ・ディレクターの渡辺大聖(ヴィジュアル)の4名から成るバンド、Sir Vanity。それぞれの分野において第一線で活躍する彼らがバンド・プロジェクトを開始したのは2019年7月のこと。以前よりコンテンツでの仕事を通じて面識のあった4人が桑原の呼びかけによりサバ料理専門店で会食したことがきっかけだったという。
「声優さんもクリエイターも基本は受け仕事なので、そうではなく〈自分たちで好きなように活動できる何かをやりたいね〉ということでバンドを始めました。そのときに作った4人のグループLINEの名前が〈3869(仮)〉なのですが、バンド名を決める際も結局サバから抜け出せず、梅ちゃんがSir Vanityというアイデアを出してくれて」(桑原)。
「語呂合わせで略称を〈サバ〉にしたかったのと、〈虚栄心〉や〈うぬぼれ〉を意味する〈Vanity〉という言葉にかけて、自分たちとしても恥ずかしがらずに活動していこう、という意味合いがあります。僕は学生の頃に軽音部に入っていて楽しかった思い出があるので、気の合う人で集まって楽器を演奏したり、自己満足でもいいので気ままにやれたらいいなと思っていて」(梅原)。
「声優は主にキャラクター・ソングを歌わせていただくことが多くて、普段はそのキャラの範囲内で表現しているのですが、このバンドはそういったお仕事から離れて自由な表現をできる場所として始まっているので、僕らが趣味でやっている音楽で楽しんでくれる人がいてくれたらWin-Winかな、くらいのスタンスでやってます」(中島)。
「自分も中高生のときにヴィジュアル系のバンドをやっていて、その頃は思うがままに生きていたんですけど、大人になったらいつの間にか自分自身が丸くなってしまったと感じることが増えて。Sir Vanityでは、いろんなしがらみを取っ払って自分たちだけのためにやりたいことを考えられるし、本業のときとは違う自分の中のリソースを使って表現していく僕らの在り方は、多様性を大事にするいまの時代に合っていると思うんです。僕らはただの声優アーティストでもないし、単純なバンドというわけでもない。いろんな業種の人がいるからこそ出来上がる作品や世界観を楽しんでもらいたいです」(渡辺)。
2020年4月に本格始動し、同年6月に初音源となるシングル『Vanity/悠』を配信リリースして以降は、2022年にファースト・アルバム『Ray』を届けて初ワンマンも実現。2023年にはミニ・アルバム『midnight sun』にZepp Hanedaでの単独公演開催と、それぞれ本業が多忙を極めるなか活動を続けてきた彼ら。2枚目のミニ・アルバムとなる新作『Latitude』も、ロックを軸に曲想豊かなバンド・サウンドと、バリトン系の中低音が魅力の梅原と張りのある中高音を持つ中島による雄々しいツイン・ヴォーカルがさまざまな表情を見せる一枚となった。
「今回は梅ちゃんが1年以上前に作ってくれていた“ポイント・ネモ”という曲を基準に、いまの自分たちがやりたいことを詰め込みました。僕は明るい曲を作ることに苦手意識があるのですが、メンバーから〈明るい曲を作ろう〉という案が出たので、僕ができる最大限の明るい曲として作ったのが“らしくないかもな”、TikTokやSNSでバズりそうな曲を意識したのが“御免あそばせ”、梅ちゃんが好きなループ系のチルっぽい音楽をバンドに落とし込んだのが“home”、逆にサバっぽい曲も作ろうと思って出来たのが“to start over”です。“ポイント・ネモ”の歌詞にある〈緯度〉を英語にした『Latitude』には〈許容度・許容範囲〉という意味もあるので、自分たちのなかでの音楽的な幅の自由度を示す、という意味も込めています」(桑原)。