歌謡曲のメソッドをロックに落とし込んだ独自性
男女ツインボーカルについてもイマサは〈思い付き〉とうそぶいているが、ほとんどの作詞作曲を手掛ける彼にとってフロントが男女の対立軸というのはバンドの肝であったはずだ。では何をお手本にしたのかといえば、そのヒントらしきものが6枚目のアルバム『eeney meeney barbee moe』(1990年)にある。
同作のジャケットは明らかにアメリカのニューウェーブバンド、B-52’sの『Wild Planet』(1980年)のパロディだと思うのだが、そういえばB-52’sも男女ボーカルではないか(こちらは男1女2だけど)。もちろんコンタの歌声はフレッド・シュナイダーほどヘナヘナしていないし、杏子の歌唱もケイト・ピアソンやシンディ・ウィルソンのようにキャピっていないが、ここはバンドフォーマットとして参考にしたからこその種明かし的な引用だと考えたいところである。
そのB-52’sとも共演している日本のテクノポップバンド、プラスチックスも男女ボーカルの先達なので、少なからず参考にしていた可能性もある。“ふしだら VS よこしま”の罵りあうパートなんて聴きようによっては〈それっぽい〉気がしなくもない。なお、男女歌唱の力強さとスピード感という点ではLAパンクのレジェンド、Xからの影響説を唱えたい気持ちもあるが、やや無理筋な気もするのでこれはそっと心の裡に秘めておこう。
男女間の生々しいやり取りを描いた歌詞と、話し言葉による会話調の文体もまた彼らならではの魅力だといえる。もっとも、そうした歌詞や文体は歌謡曲では定石ともいえる手法で、一例を挙げれば僕が好きなサンタクララというデュオの“男と女”なんて、もはやほとんど〈場末のスナック版バービーボーイズ〉なのである。つまりバービーの独自性とは、そんな歌謡曲(メインカルチャー)のメソッドをロック(ユースカルチャー)の形式に無理なく落とし込んだことにこそあるのだ。
ザ・ポリス、ザ・スミスなどが香る洋楽的エッセンス
そうしたドメスティックな要素とは裏腹に彼らの音楽が洋楽的である理由は、ひとえにサウンドメイキングの要であるイマサの嗜好と趣向によるものだろう。彼が影響を受けたギタリストとして挙げているのがザ・ポリスのアンディ・サマーズとU2のジ・エッジだが、多彩なエフェクターを駆使した空間的な音作りはたしかに通じるものがあるし、編曲面での影響もうかがえる。ためしに“チャンス到来”とポリスの“Every Breath You Take”のアレンジを聴き比べてみるのも一興だろう。
また、公言はしていないようだがザ・スミスのジョニー・マーからのインフルエンスも少なからずあるように思える。曲の要所でさりげなく入る輪郭のキリッとした流麗なアルペジオに〈はっ! スミス?〉と耳をそばだててしまう瞬間があるのだ。先日リイシューされたセカンドアルバム『Freebee』(1985年)はとくにその度合いが高くて、“midnight peepin’”や“負けるもんか”、“ダメージ”辺りはスミスやギターポップのファンにも存外響くのじゃなかろうかと思ったり。翌年のシングル“なんだったんだ? 7DAYS”もイントロだけ聴けばほとんどネオアコである。
ほかにもたとえば『LISTEN! BARBEE BOYS 4』(1986年)収録の名曲“ナイーヴ”の奥行きのあるサウンドは、ザ・ポリスのようだけどもしかしてプリファブ・スプラウトの影響もあるのだろうか?とか、憶測だけならばいくらでも勝手に書けるのだけれど、当然ながらそれは野暮ってなものである。
大事なのはそうした同時代の先進的な洋楽エッセンスと歌謡曲の伝統を巧みに織り交ぜたことで、バービーボーイズが〈スタイリッシュで下世話〉という二律背反した特殊すぎるオリジナリティを確立したことなのだ。あまりにも個性的なためにレイザーラモンRGと椿鬼奴のようなわかり易いパロディは成立しても、そのスタイルを継承するフォロワーはまるで生まれなかったことが、かえって彼らがいかに比類なきバンドだったのかを証明しているのである。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2025年3月26日(水)
作品詳細ページ:https://www.110107.com/listen
■CD
品番:MHCL-31053
価格:3,520円(税込)
※メンバー立ち会いによる2025年最新リマスター音源、Blu-spec CD2仕様
■LP(33 1/3 RPM) ※完全生産限定盤
品番:MHCL-393
価格:4,840円(税込)
※メンバー立ち会いによる2025年最新リマスター/カッティング音源、アナログLP 180g重量盤仕様(12inch)
TRACKLIST
1. はちあわせのメッカ
作詩:杏子 作曲:BARBEE BOYS 編曲:BARBEE BOYS
2. 泣いたままで listen to me (ORIGINAL MIX)
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
3. Dear わがままエイリアン
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
4. ごめんなさい
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
5. 女ぎつね on the Run (ORIGINAL “BIG BOWL” VERSION)
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
6. わぁい わぁい わい
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
7. 涙で綴るパパへの手紙
作詩:近藤敦 作曲:近藤敦 編曲:BARBEE BOYS
8. -夜の街-
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
9. Noisy
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
10. くちにチャック
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
11. ナイーヴ
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
※LP:Side-A(M1~M5)/Side-B(M6~M11)収録
リリース日:2025年2月26日(水)
作品詳細ページ:https://www.110107.com/3rdBREAK
■CD
品番:MHCL-31052
価格:3,520円(税込)
※メンバー立ち会いによる2024年最新リマスター音源、Blu-spec CD2仕様
■LP(33 1/3 RPM) ※完全生産限定盤
品番:MHCL-392
価格:4,840円(税込)
※メンバー立ち会いによる2024年最新リマスター/カッティング音源、アナログLP 180g重量盤仕様(12inch)
TRACKLIST
1. 離れろよ
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
2. どんなもんだいッ
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともた
3. はやまったらイヤだぜ
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
4. ショート寸前
作詩:いまみちともたか/杏子 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
5. チークダンス
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
6. 打ち上げ花火
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOY
7. なんだったんだ? 7DAYS
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
8. STOP!
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
9. ラサーラ
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
※LP:Side-A(M1~M5)/Side-B(M6~M9)収録
リリース日:2025年1月22日(水)
作品詳細ページ:https://www.110107.com/Freebee
■CD
品番:MHCL-31051
価格:3,520円(税込)
※メンバー立ち会いによる2024年最新リマスター音源、Blu-spec CD2仕様
■LP(33 1/3 RPM) ※完全生産限定盤
品番:MHCL-391
価格:4,840円(税込)
※メンバー立ち会いによる2024年最新リマスター/カッティング音源、アナログLP 180g重量盤仕様(12inch)
TRACKLIST
1. midnight peepin’
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
2. 負けるもんか
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか
3. チャンス到来
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
4. マイティウーマン
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
5. でも!?しょうがない (Riverside Mix)
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
6. 悪徳なんか怖くない
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
7. ドンマイ ドンマイ
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
8. ラストキッス
作詩:近藤敦 作曲:近藤敦 編曲:BARBEE BOYS
9. タイムリミット
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
10. ダメージ
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
※LP:Side-A(M1~M5)/Side-B(M6~M-10)収録
リリース日:2024年12月25日(水)
作品詳細ページ:https://www.110107.com/1stOption
■CD
品番:MHCL-31050
定価:3,520円(税込)
※メンバー立ち会いによる2024年最新リマスター音源、Blu-spec CD2仕様
■LP(33 1/3 RPM) ※完全生産限定盤
品番:MHJL-390
定価:4,840円(税込)
※メンバー立ち会いによる2024年最新リマスター/カッティング音源、アナログLP 180g重量盤仕様(12inch)
TRACKLIST
1. 帰さない
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
2. ふしだら VS よこしま
作詩:近藤あつし 作曲:近藤あつし 編曲:BARBEE BOYS
3. Shit! Shit! 嫉妬
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
4. プリティドール
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
5. a nine days’ wonder
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
6. もォやだ! (Original Mix)
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
7. Blue Blue Rose
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
8. 小僧-cryin’ on the beach
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
9. 暗闇でDANCE
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
10. 冗談じゃない
作詩:いまみちともたか 作曲:いまみちともたか 編曲:BARBEE BOYS
※LP:Side-A(M1~M5)/Side-B(M6~M10)収録
バービーボーイズ40周年特設サイト〈暗闇日砲デジタル〉WEB版:https://www.110107.com/s/oto/page/barbee40th
PROFILE: バービーボーイズ
1984年9月21日、男女のツインボーカル、ギタートリオにサックスを乗せたバンドサウンドで、シングル“暗闇でDANCE”でレコードデビュー。1992年1月、ファイナルライブを最後に解散。約8年ほどの活動期間中に、シングル16枚、オリジナルアルバム6枚を発表。解散から11年後の2003年2月に〈LIVE EPIC 25〉への出演依頼を受け再結集。2008年4月、テレビ番組への出演をきっかけに再々結集。この流れに乗り、2009年、2010年に全国ツアーを開催した。2018年10月、またもテレビ番組出演をきっかけに三度結集。2019年4月よりバンド活動を再開。同年12月にインディーズレーベルより29年ぶりとなる新作『PlanBee』を発表。2020年1月に代々木第一体育館、LINE CUBE SHIBUYAでのワンマンライブを行う。そして2024年9月21日、デビュー40年を迎えた。
PROFILE: 北爪啓之
1972年生まれ。1999年にタワーレコード入社、2020年に退社するまで洋楽バイヤーとして、主にリイシューやはじっこの方のロックを担当。2016年、渋谷店内にオープンしたショップインショップ〈パイドパイパーハウス〉の立ち上げ時から運営スタッフとして従事。またbounce誌ではレビュー執筆のほか、〈ロック!年の差なんて〉〈ろっくおん!〉などの長期連載に携わった。現在は地元の群馬と東京を行ったり来たりしつつ、音楽ライターとして活動している。NHKラジオ第一「ふんわり」木曜日の構成スタッフ。





