アーティストの年代記をディスコグラフィーを辿りながら紹介。今回はデビュー40周年を迎えた唯一無二の5人組バンド!

 80年代の日本の音楽シーンにおいて、その後のいわゆる〈バンド・ブーム〉とも異なる独自の人気を獲得した個性的なバンド、バービーボーイズ。イマサこといまみちともたかを中心とする尖りつつも洗練されたサウンド、杏子とKONTAが掛け合う刺激的な男女ヴォーカルのパフォーマンスは、現在も支持を集めています。

 そんな彼らのデビュー40周年を記念したプロジェクトが始まったのは2024年の12月。ファースト・アルバム『1st OPTION』を皮切りに、この8月に登場したばかりの最新セレクト・アルバム『Blank List』までを含む全9タイトルが、リマスター&高音質のBlu-spec CD2仕様、さらに一部は曲順などを再編集された形で世に送り出されてきました。ここではその全ラインナップを紹介しましょう! *bounce編集部


 

バービーボーイズ 『1st OPTION』 エピック/ソニー(1985)

始まりは地味だった。この1作目はオリコン・チャート87位。80年代好景気に裏付けられたコマーシャルなポップスが主流の時代、ソリッドなニューウェイヴ系統のギター・ロック、ビターな大人の恋愛ストーリー、痴話ゲンカと評された戦闘的な男女デュエットは斬新すぎた。KONTAがリードを歌う曲が多く、全作中でもっとも〈ボーイズ〉感が強いのは本作の特徴だが、後の大ヒットに繋がるイマサの演劇的な曲作りの巧さは確立済み。シングル“暗闇でDANCE”“もォやだ!”の名曲振りが際立つ。

 

バービーボーイズ 『Freebee』 エピック/ソニー(1985)

ブレイクまであと一歩。同時代の全米TOP40にも通じるダンス&ポップな曲が増え、初ヒット“負けるもんか”も生まれた2作目。杏子の存在感がぐっと増して、“でも!?しょうがない”“悪徳なんか怖くない”でのKONTAとの掛け合いはもはや本気の罵り合い。彼女がソロで歌う“タイムリミット”も色気と凄みたっぷりだ。KONTAも(前半だけ)バラードの“ラストキッス”で名唱を聴かせ、イマサのコンセプトに個々の表現と時代が追いついてきた感がある。人気曲“チャンス到来”はここに収録。

 

バービーボーイズ 『3rd. BREAK』 エピック/ソニー(1985)

キャッチーなソプラノ・サックス、男女で刺し合うかのような歌、ニューウェイヴやファンク、ネオアコなどを独自に消化した演奏。ついに確立したバンドのスタイルを代表する“離れろよ”で幕を開ける出世作となったサード・アルバム。高性能リズム・マシーンに徹する小沼俊昭とスラップで魅了するエンリケのテクニカルな演奏も素晴らしい。シングルは“なんだったんだ? 7DAYS”のみだが、杏子が鬼気迫る歌唱を聴かせる“ショート寸前”、 KONTAが壮大な哀愁を背負い歌う“ラサーラ”など粒揃い。

 

バービーボーイズ 『LISTEN! BARBEE BOYS 4』 エピック/ソニー(1987)

この4作目では、冒頭5曲は従来の進化形。清涼飲料のCMソングとしてヒットした“女ぎつね on the Run”や“泣いたままで listen to me”など、お洒落な大人のムードと下世話な恋愛トークを両立させた、パブリック・イメージに完璧に応える曲が並ぶ。後半6曲は、KONTAが都会暮らしの女性心理を鋭く描く“涙で綴るパパへの手紙”、PSY・Sへの提供曲をセルフ・カヴァーした杏子ヴォーカルの“Noisy”など、歌い手2人の個性を際立たせた曲が多い。デビュー3年、ひとつの完成形を迎えた代表作。

 

バービーボーイズ 『Black List』 エピック/ソニー(1988)

最初の2作の出来栄え(と世間の評価)に、イマサは納得がいっていなかったのだろう。そこからの楽曲を中心に、NYリミックスを敢行したこの初期ベスト・アルバムを世に問うた。リズム隊のクリアな響き、ギターの空間的な広がりは圧巻で、“チャンス到来”のU2めいたフレーズも本家に迫る輝きを放つ。シングルB面曲“C’m’on Let’s Go!”“瞳の奥でまばたくな”“MIDNIGHT CALL”が、A面に劣らぬ良い曲だと知らしめる効果もあった。当時オリコン2位、曲たちも浮かばれたに違いない。

 

RADIO-K, バービーボーイズ 『JUST TWO OF US』 エピック/ソニー(1988)

KONTAが主演&音楽監督を務めた映画「・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・」サウンドトラックで、KONTA+イマサ+旧友の能勢寛=RADIO-K名義の4曲、バービーボーイズ名義の2曲を収めた作品。インストが2曲、能勢の歌う曲が2曲あり、バービーボーイズらしさが感じられるのはシングル・カットされた“使い放題tenderness”と、KONTAが歌う映画主題歌“DAY LAST DAY”。打ち込みも使った変則的な作品だが、リイシューされたということは思い入れがあるのだろう。ここでしか聴けない音は確かにある。

 

バービーボーイズ 『√5 デトックス』 エピック/ソニー(2025)

いま聴くと歌詞のヤバさに戦慄するヒット曲“目を閉じておいでよ”や“chibi”、痛快ビート・ロック“さぁ どうしよう”、レゲエの“Late Again”、杏子作詞・エンリケ作曲の“ト・キ・メ・キ”など、これまで以上にヴァラエティー豊かな収録曲で初のオリコン1位をゲットした5作目『√5』(89年)を、名エンジニアの渡辺省二郎がリミックス、曲順も入れ替えた2025年作品。オリジナルとの最大の違いはネイキッドな質感で、すっきり軽やかなバンド・サウンド、エコーを剥ぎ取った歌声が耳に心地良い。

 

バービーボーイズ 『eeney meeney barbee moe』 エピック/ソニー(1990)

最初の解散を前にした6作目もオリコン1位を記録。冒頭からの“三日月の憂鬱”“あいまいtension”“ノーマジーン”“勇み足サミー” のシングル4連発は鮮烈だが、かつてのバチバチ感よりも、功成り名を遂げたロック・バンドならではの成熟を強く感じる。“静けさに”をはじめ、杏子の歌も母性的な包容力を増した。バブル前夜から絶頂期まで80年代を駆け抜けた5人のひとつの終着点であり、イマサが一人で歌う“クラリネット”が切なく沁みる。なお今回のリイシューに際して曲順が変更された。

 

バービーボーイズ 『Blank List』 エピック/ソニー(2025)

伝説なんかになってたまるか。『3rd. BREAK』以降のエピック期の作品+2019年の復活作『PlanBee』から選曲したこの最新作は、5人がいまを生きる存在証明。先の『√5デトックス』に引き続き、名エンジニアの渡辺省二郎がリミックスを手掛けた『PlanBee』収録曲“翔んでみせろ”“ぼくらのバックナンバー”をはじめ、全曲が強力な個性を主張するベスト・アルバムとしての破壊力は抜群だ。それにしても“翔んでみせろ”のKONTAのヴォーカルは凄い。魂が震える。

 


バービーボーイズ
KONTA(ヴォーカル&サックス)、杏子(ヴォーカル)、いまみちともたか(ギター)、エンリケ(ベース)、小沼俊明(ドラムス)によるバンド。84年9月に“暗闇でDANCE”でデビュー。シングル16枚とアルバム6枚を発表し、92年1月に解散。2003年以降、3度の再結集を果たし、2019年4月に活動を再開。同年12月にインディー・レーベルから29年ぶりのアルバム『PlanBee』を発表。2024年9月21日、デビュー40年を迎えた。