米オハイオ州シンシナティ発の5人組、ソフトスポークンがサードEP『Martyr』を完成させた。もともとクリス・ウェジントンが日本への留学中にソロ・プロジェクトとして立ち上げ、アメリカ帰国後にバンドとなって本格始動。2017年のファーストEP『Pathways』は、穏やかなバンド名に反してスクリーモ/ポスト・ハードコアに属する音楽性であった。

 「大きく影響を受けたのはアンダーオースなんだ。アグレッシヴなギターが鳴っていて、スクリームやメロディアスなパートもあるからね。バンドとして最初に書いた曲は2016年の“Shorelines”。それからファーストEP『Pathways』を作る段階でメロディアスなパートが増えた。そのあとにサム(・シューアー)が加入して、さらにバンドは変化したと思う。彼と最初に作った“Begin Again”(2017年)という曲で新生ソフトスポークンがスタートしたからね」(クリス)。

 「2019年のファースト・アルバム『Deaf Perception』で僕とクリスによる2人体制のソングライティングが確立された。それが成果として結実した楽曲が2021年にリリースした“Where The Heart Belongs”だと思う」(サム)。

 過去にはノンポイント、ア・スカイリット・ドライヴなどとツアーを行ない、2024年はSurvive Said The Prophet、花冷え。のUSツアーに帯同している。

 「Survive Said The Prophetとは絆を深められたよ。Yoshと一緒に曲を書いたりしているんだ」(クリス)。

 「彼らは観客と一体化するのが上手い。花冷え。はシネマティックでヴィジュアル的にもインパクトがあるよね」(ケビン・ポッツ)。

「花冷え。のライヴではケビンと一緒にモッシュしたんだ(笑)」(サム)

 多彩な対バンを繰り広げ、音楽性を研磨してきた彼ら。今回のEP『Martyr』ではアグレッシヴな側面が強化されつつ、持ち前のメロディアスな要素と融合。結果、ダイナミクスに溢れる楽曲が揃った。スタジアム規模の会場でも映える楽曲スケールには驚かされてしまう。

 「プレッシャーはあったけど、スタジアム規模という言葉をもらえて最高に嬉しいよ!」(サム)。

 「ソフトとヘヴィーの両面を成熟させながら曲を作れたと思う。音楽的なボーダーを押し広げることができたね」(ケビン)。

 「僕らは変化球を投げるのが好きなんだ(笑)。ヘヴィーなサウンドはライヴでやると楽しいよね」(クリス)。

SOFTSPOKEN 『Martyr』 Theoria(2025)

 さらにブリング・ミー・ザ・ホライズンに代表されるエレクトロニコア的なプロダクションにも挑み、新境地を開拓している。

 「音作りはプロデューサーのキャメロン・ミゼルの手腕が大きい。エレクトロを取り入れたのは、変化を恐れずに良いものを取り込んでいきたいという気持ちがあったから」(サム)。

 今作のなかでチャレンジングだった楽曲を聞いてみた。

 「“Throw Me Your Roses”は唯一メンバー全員で作り上げた曲なんだ。個々のアイデアを上手く集約できたと思う」(ケビン)。

 「“I Against Me”の歌詞は個人的なものなんだけど、〈内なる闘い〉みたいなテーマになった。精神のバランスが取れなくなった人に共感してもらえる内容だと思うよ」(サム)。

 「ほとんどの曲はキャメロンがプロデュースしているけど、“I Against Me”だけエヴァン・マッキーヴァーがやってくれたんだ。サムがヴォーカルのアイデアを膨らませて、ケビンがR&Bのテイストを入れてくれた。この曲だけ3拍子で実験的に作ったものだけど、良い仕上がりになったよ」(クリス)。

 内省的な歌詞と共にサウンドを飛躍的に向上させた今作は、ロック好きならば必ず響く要素が満載だ。ぜひともチェックしてほしい。

 


ソフトスポークン
サム・シューアー(ヴォーカリスト)、クリス・ウェジントン(ギター)、ロビー・ヴァルデズ(ギター)、ディラン・カーター(ベース)、ケビン・ポッツ(ドラムス)から成る5人組バンド。2016年に結成され、2019年にファースト・アルバム『Deaf Perception』をリリース。2021年のEP『Where The Heart Belongs』がヒットし、アップカミングな存在として注目された。2024年の初来日公演を経て、このたび3作目となるEP『Martyr』(THEORIA)をリリースしたばかり。