アマチュアのチェリストだったシェーンベルク(1874~1952)が、十二音技法を創始し、音楽史に偉大な足跡を残すに至るには、19世紀末の〈若きウィーン〉(Jung Wien)の芸術家たちとの様々な出会いがあった、というのが本書のテーマである。〈音楽作曲家――作家、詩人、理論家、画家、装丁家、指物師にして経師屋〉と自称した彼は、音楽のみならず〈作品からあるシステムを発見〉し、新作の創造へと結びつけていた。本書に表れる有名無名の世紀末ウィーンの芸術家たちとのジャンルを超えた邂逅は、原著者による丹念な一次資料の裏付けにより極めて生々しく、それを些かも歪みなく日本語化しようとする訳者の熱意にも敬服!