〈FUJI ROCK FESTIVAL ’26〉が2026年7月24日(金)、25日(土)、26日(日)の3日間、新潟・苗場スキー場にて開催される。今年も国内外の多様なアーティストが集結するフジロックについて、注目アーティストなどを挙げながらトピック毎に見どころを解説していく。 *Mikiki編集部

我が道を行く今年のヘッドライナー3組
今年のフジロックの顔となるヘッドライナー。いずれもGREEN STAGEにふさわしい、我が道を行く3組が揃った。
まずは約8年ぶりに復活を果たしたThe xx。GREENのトリは今回が初で、2010年の初出演時がRED MARQUEEだったことを考えると、本人たち、そしてフジロッカーにとっても感慨深いステージとなるはずだ。今年のコーチェラでのステージも配信でチェックしたが、“Angels”“On Hold”といった代表曲のほか、活動休止中に発表した3人の各ソロ曲を繋いでいくライブ中盤のパートが特に素晴らしかった。以前のライブでもクラブミュージックの要素は強調されていたが、カムバック後はよりダンサブルでフロア志向なパフォーマンスとなっているようだ。夜の苗場で静と動、どちらの高揚感も得られるに違いない。
トリップホップの代表格(本人たちはこのジャンルに括られることを嫌っているが)にして、ブリストルの雄ことマッシヴ・アタックは16年ぶりに同フェスへと帰還する。現在新作のリリースも噂されているなか、4月にはトム・ウェイツとコラボした新作“Boots On The Ground”を発表。彼らの音楽やパフォーマンスは決してトリップ(幻覚)などではなく、今この世界で起きているリアルが凝縮されている。ライブを観た後、一体どんな気持ちになるのか気になるところだ。
そしてある意味サプライズとなったのが、フェス2日目のトリを務めるクルアンビン。タイ音楽をメインに東南アジアから中東、作品によってはアフリカや南米のグルーヴまでをも飲み込んだエキゾチックかつファンキーなサウンドは、まさに唯一無二。2025年には発売10周年を迎えた1stアルバムを再録・再構築した『The Universe Smiles Upon You II』をリリースし、バンド自らで過去をアップデートしてみせた。一部では彼らがトリを飾ることに否定的な声が上がっているようだが、であれば尚更その目で確かめるべきではないだろうか。おそらく終演後、恍惚の表情を浮かべるオーディエンスで会場が埋め尽くされているはずだ。 *小田

藤井 風の初フジロックは伝説のステージに
話題性という点では、今年のフジロックの台風の目になりそうなアーティストとして言及しておかなければいけない存在がいる。言わずもがな、藤井 風だ。スタジアムでもライブをおこなっている彼は、もはやヘッドライナークラスと言ってよく、チケットが争奪戦になることからも、いま多くの音楽ファンが〈ライブを見てみたい〉と願ってやまない存在のはず。
直近では4月のコーチェラへの出演で、現地のオーディエンスと配信視聴者を沸かせた。2025年に『Prema』をリパブリックからグローバルリリース、今年10月からはワールドツアーに赴くなど、もはや世界的ミュージシャンになった彼がフジロックに初出演するのは、とにかくスペシャルだ。キャリアはちがえど、近年フジロックに出演した矢沢永吉や山下達郎ばりの存在感をラインナップ上で放っている。
コーチェラには初披露の曲を含む『Prema』モードのセットリストで挑んだことから、フジロックでも同様のライブをおこなうことが予想できる。だが、“何なんw”や“きらり”といった彼のファンでなくとも耳にしたことがある代表曲、国外のオーディエンスにもっとも知られているはずの“死ぬのがいいわ”といったヒット曲も、きっと聴けるのでは。また、コーチェラではWONKの江﨑文武やSuchmosのTAIKINGといった強力なメンバーが参加していたわけで、バックバンドがどんな布陣になるのかにも注目したいところ。しかし、もっとも期待したいのは、藤井 風のコアであり、シンプルながらも非情に豊かな表現を聴かせる歌とピアノによる削ぎ落されたパフォーマンスだ。広大な自然が広がるGREEN STAGEで彼の歌とピアノが鳴り響いたら……と想像すると、溜息を漏らしてしまう。出演は2日目。どんなライブになろうとも、伝説になることがすでに約束されている。 *天野

海外勢に劣らない国内ロックアーティスト
世界各国のビッグネームが集うフジロックだからこそ、ぜひとも日本のロックバンド/ロックアーティストを観てほしい――そんな思いのもと、国内アーティストを何組かピックアップしたい。
ZAXをドラマーに迎えたHi-STANDARDは、なんと27年ぶりのフジロック出演。 胸に沁みるメロディと猪突猛進なビートで新旧のリスナーを満足させた最新作『Screaming Newborn Baby』の楽曲からお馴染みのアンセムまで、全曲シンガロング必至な熱いステージに期待したい。
初日のWHITE STAGEのトリには、結成30周年を迎えたASIAN KUNG-FU GENERATIONが登場。今年は3rdアルバム『ファンクラブ』の再現ツアーなども控えていて同作からのナンバーも聴きたいところだが、そこはフェスの特性をよく理解しているであろうアジカン、きっと世代問わず楽しめるセトリを準備してくれるはず。
さらに、3日目のRED MARQUEEでアメリカン・フットボールやフリコらと競演する浅井健一、サーストン・ムーア・グループと同じ並びというだけでも胸が高鳴るサニーデイ・サービスなど、ステージ割の妙でボルテージが上がる面々にもチェックしておきたいところ。また、先日13年ぶりの新曲“パリ、わたしたちの”を発表したthe cabs、グランジだけでなくダンスロックからビッグビート風のアプローチまでも身に付けたw.o.d.、昨年ROOKIE A GO-GOに出場し、今年メインステージへの切符を掴んだテレビ大陸音頭あたりも見逃せない。
最後に、個人的に観たいのがGRAPEVINEと、バンドセットで登場する柴田聡子の2組。GRAPEVINEはフジロック直後に4thアルバム『Circulator』を取り上げたツアーが始まるので“風待ち”などの名曲が聴けるかも。 *小田

ロックフェスとしての矜持を見せるオルタナ/インディーアクト
フジロックが、伝統あるロックフェスとしての矜持を見せつけているラインナップにも注目してほしい。スタートから29年が経ち、音楽シーンが変化しようとも、エッジーなオルタナティブ/インディーロックアクトが今年も目白押しなのだ。
まずはベテラン勢。ソニック・ユースの精神を受け継ぐサーストン・ムーア・グループは、即興演奏を交えながら、サーストンにしか弾けないあのギターと彼らしい歌を聴かせてくれるはず(なお、ソニック・ユースの曲は演奏しないと思われる)。ポストロックの代表格モグワイは、話題作『The Bad Fire』を2025年に発表したばかり。同作や近作の曲を中心に披露するだろうが、“Mogwai Fear Satan”のようなクラシックの映像喚起的なパフォーマンスにも期待したい。そしてミッドウェストエモを象徴するアメリカン・フットボールが、8年ぶりのアルバム『American Football (LP4)』を携え出演。「前回はすごい嵐に見舞われたから、(中略)今回はもっと上手くやれるはずだ」とマイク・キンセラが語っているので、いやが応でも楽しみになる。
最新のロックを追っているリスナーも、フジロックに足を運ぶべき大きな理由がある。ターンスタイルが2024年のフジロックでおこなったライブは、もはや伝説級だろう。今年もハードコアの熱で、その場にいるオーディエンス全員を巻き込むはずだ。インディロック界で頭一つ抜けた日系スターのミツキは、昨年の『Nothing’s About To Happen To Me』などでアメリカーナ的な親密なサウンドにアプローチしている。そんな最新モードのなかに、最近人気曲として浮上した“I Bet On Losing Dogs”を溶け込ませたセットリストで魅了してくれそうだ(ちなみに“Your Best American Girl”は数年演奏していないので、悪しからず)。
元ブラック・ミディのジョーディ・グリープは、奇想に満ちた超絶技巧の複雑な演奏で独自の音楽世界を築くはず。同じUKインディの土壌から成長し羽ばたいているソーリー※にも、ぜひ注目してほしい。日本人気が高いシカゴインディの象徴フリコを楽しみにしている人も多いだろう。2ndアルバム『Something Worth Waiting For』を発表したばかりの彼らには、収録曲“Seven Degrees”で聴けるような歌心と爆発力に期待だ。新作『Look For Your Mind!』が話題のザ・レモン・ツイッグスも、日本でおなじみの存在。クラシックロックやパワーポップの妙を美しいハーモニーとともに聴かせてくれるにちがいない。シンガーソングライターのスネイル・メイルも3rdアルバム『Ricochet』をリリースしたばかりで、成熟し深化した歌世界を聴かせてくれるだろう。
※2026年7月17日追記:ソーリーはアーティストの都合により出演キャンセルとなりました
個人的な推しはニュージーランドのザ・ベス。傑作『Expert In A Dying Field』に続く新作『Straight Line Was A Lie』も素晴らしく、強靭なメロディとジャングリー/アノラックなサウンドを保ちながら内省性を増している。フジロック出演を機に、もっと人気が出てほしいというか、出るはず! *天野

〈次世代のバッド・バニー〉も? クセ者揃いのヒップホップ/ラップ勢
ヒップホップ/ラップアーティストは近年に比べると出演数は少なめに感じるが、重要なのは数ではない。むしろ1組1組がクセ者で、それぞれが己のアイデンティティやステートメントを苗場にぶち撒けてくれるだろう。
北アイルランドはベルファストから今年初めに初来日を果たしたばかりのニーキャップは、今回が初のフジロック。Instagramに〈日本よ、準備はいいか。ニーキャップが帰ってきたぞ!〉と日本語でコメントするほど、かなり前のめりなようだ。ダン・キャリーがプロデュースしたニューアルバム『FENIAN』ではダウンビートやドリルンベースなどを用いて、自分たちが戦うべき対象に向けて言葉を吐き続けていた。3日目のGREENに轟く彼らの絶叫をぜひ直接浴びてほしい。
個人的な激推しはブエノスアイレス出身のラッパーで、これが初来日となるトレノ。最近ではゴリラズの新作『The Mountain』にも参加していたが、それ以外にもJ. バルヴィン、マシュメロ、DJプレミアといった面子ともコラボするなど、まさに〈次世代のバッド・バニー〉となり得るだけのポテンシャルを持つ存在だ。自国のルーツを掘り下げた4thアルバム『TURR4ZO』をドロップしたばかりで、同作に込められたパーソナルな思いを苗場で受け止めたい。ちなみに昨年のフジロックで一躍脚光を浴びたカトパコことカトリエル&パコ・アモロソと同郷ということで、そうした繋がりからもブレイクするかも。
そのほかジャジーヒップホップを極めしロイル・カーナー、ゲーム実況者からラッパー(現在はシンガーシングライターの側面が強い)へと転向し、ローファイなフォークトロニカをベースとした独自のサウンドスケープを構築するクアデカ、日本勢でもSuchmosとの対バンも記憶に新しいIO、Awichらと共に“RASEN in OKINAWA”で見事なマイクリレーを披露した唾奇などが顔を揃える。いずれもフジロックならではのロケーションと相まって、特別なステージとなるに違いない。 *小田

フェスを多面的に楽しめるアフリカやインドなどの非英語圏アーティスト
ほかのフェスにないフジロックらしさ、ということでは、北米やヨーロッパ以外のアーティストを多数招聘していることが挙げられる。かつて〈ワールドミュージック〉の棚に押し込められていた彼らの音楽も、グローバル化の徹底でほとんどフラット化され、リスナーも新鮮な音楽として触れる機会が増えただろう。フジロックは、そういうローカルでオーガニックでユニークな音楽の紹介役として地道に貢献してきた面も大きい。
今年はといえば、まず〈砂漠のブルース〉を代表するティナリウェン※が挙げられる。サハラ砂漠のトゥアレグ族によるバンドで、1979年に活動を始め、2000年代に世界的な評価を高めてから20年以上経つ大ベテランだ。最近はエムドゥ・モクターが台頭した〈砂漠のブルース〉系譜の音楽だが、ティナリウェンの個性は不変で、それは新作『Hoggar』にも刻まれている。サイケデリックかつ催眠的ですらあるグルーヴは、FIELD OF HEAVENの環境でこそ映える。
※2026年6月5日追記:ティナリウェンはアーティスト側のやむを得ない事情により出演キャンセルとなりました
オランダのバンドで、トルコ系のエルディンチ・エジェヴィト・ユルドゥズが歌うアルトゥン・ギュンは、いま話題の一組。トルコの伝統音楽や民謡をポップでサイケデリックな演奏に融合させた、まさにポストワールドミュージック的な存在だ。インドのターラ・フライも、遠からずな陶酔性を奏でる。瞑想的なリズムと歌のこぶしに一発で魅了される者は多いはずだ。ビートルズやラヴィ・シャンカル、M. S. スブラクシュミ、U-zhaanなどからインド古典音楽に興味を持った者も、そうでない者も必聴。
チルもサイケもいらん、躍らせろ!という方にはこちらを。2000年代に注目を集めた南米コロンビアのクンビアを歪ませ、パンキッシュに聴かせるソン・ロンペ・ペラ。メキシコ発の彼らの音楽には、ロックやレゲエ、ダンスミュージック、コリードの愛好家もハマるだろう。南アフリカ音楽などの影響すら感じさせる演奏に身を委ねてほしい。またハンガリーのボヘミアン・ベチャーズこそ、血気盛んなオーディエンスに最適だ。ロマ音楽やバルカンブラスをパンク魂で融合させた彼らの熱い音楽は、まさに血沸き肉躍るもの。
上記の出演者の音楽は、非西洋圏のエキゾチックなサウンドに影響され、その要素を吸収してきたクルアンビンやLA LOM、ユーフのファンにこそ、ぜひ現場で体験してほしい。フジロックを多面的に楽しむ鍵が、ここにある。 *天野
LIVE INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL ’26
2025年7月24日(金)、25日(土)、26日(日)新潟・湯沢町 苗場スキー場
公式サイト:https://fujirockfestival.com