ピアノとのデュオで紡がれる名曲たち。前作のビートルズ・ジャズカヴァー集とは一転して、今作のバラード集ではシンプルなアプローチでそれぞれの楽曲が秘める内なる魅力を、その透明感あふれる歌声で綴ってゆく。それはまるで、黒ビロードの台座におさまった宝石たちが静かに光り輝いてゆくような、とても特別なひとときだ。同部屋でレコーディングされただけあって、歌声とピアノの音がナチュラルに溶け合ってゆき、自分も同じ空間にいて二人の演奏を聴いているかのようなリアルな臨場感に包まれるのも今作の大きな魅力と言えるだろう。最後に。中村真の静謐なピアノがまた美しい。