AIを活用しつつ、生のグルーヴも大事にした曲作り
──曲が書けるようになってから、今回のアルバム制作はどのように進めていきましたか?
JIPON「以前からストックしていた曲もありますが、基本的にはPETASがデモを作り、それをみんなでアレンジしていく流れでした。オンラインでトラックをやり取りしながら、スタジオで合わせて〈これはいいね〉〈これは違うな〉と試行錯誤を繰り返すことが多かったですね」
PETAS「頭の中で鳴っているイメージを、いつもDAW(音楽制作ソフト)に落とし込んでいくのですが、どうしても手癖でまとまってしまうんですよね。〈また似たような展開になっちゃったな〉と感じることも多くて。そこで試しにAIを活用してみたところ、意外と新しい視点が得られたというか」
JIPON「AIが音楽制作のヒントをくれる時代なんだな、と(笑)。僕、ベースラインにずっと悩んでいて、〈もう一生できないかも……〉って落ち込んでいた時期があったんです。そんな時も、試しにAIを使ってみたところめちゃくちゃ優秀で。もちろんそのまま使うわけじゃないけど、アイデアのきっかけにはなりましたね」
PETAS「ただ、今回はなるべく〈生っぽさ〉も大事にしようと決めていました。以前はドラムも全部打ち込んでデモを作っていたんですが、今回はまずスタジオに入ってセッションしてみる。その時にiPhoneで適当に録った音をそのままDAWに取り込み、偶発的なノイズをそのまま生かした曲もあります。“Oh What A Night”は、まさにそんな作り方でした。最初はリフだけがあって、そこから延々とセッションを繰り返してグルーヴを作っていくという」
──この曲の歌詞は、コロナ禍が明けた頃の気持ちがストレートに描かれていますね。
PETAS「あの頃は、夜に出かけることも人と会うことも制限されていましたよね。それがようやく普通に会えるようになった喜びや、〈これからはこうしてやっていきたいな〉という願いが自然と反映されました。
また、ライブで盛り上がるサウンドにしたいという意識もありましたね。80年代のダンスミュージックっぽい要素を取り入れ、ちょっとバブル期っぽい雰囲気も持たせて。当時の六本木の空気感とか、僕らにとっては完全に空想の世界ですが(笑)」
ギターは俺らの持ち味
──“Hold Me”はどういうふうに作っていきましたか?
PETAS「最初はR&Bやヒップホップのリズムをバンドで表現しようと。そこが起点になりましたね。鼻歌で浮かんだコーラスをベースに、リズムを作り上げていくという、これまでとは違うアプローチも試しています。
〈後半どうする? 終わり方が決まらないよね〉とか言いながらいろいろ試してみたんですけど、最終的にはギターがガーッと鳴る展開が一番エモーショナルで、しっくりきました」
JIPON「ギターは俺らの持ち味だから、そこは絶対に活かしたかったですね。どんなにR&B寄りの曲を作ったとしても、MARU(ギター)のプレイが入ることで、最終的に俺たちのサウンドになる。だから、〈あとは好きにやってくれ!〉って(笑)。そしたら突然、ノイズギターが入ってきて、〈なるほどね〉って感じでした。まるでレディオヘッドの“Creep”状態(笑)」
PETAS「例えば“Foggy Night”も、もともとギターなしでも成立すると思っていたんです。でも、やっぱりMARUのアイデアを試してみたくなって、〈入れるかどうかわからないけど、とりあえずデモにギターを入れてみてほしい〉とお願いしました。そこから20テイクくらい、試行錯誤しながら弾いてもらって、最終的にはこの形で落ち着きました。
リファレンスとしてフィッシュマンズのイメージもありましたが、単純に寄せるのではなくいろんな要素をミックスしてオリジナリティを出したかった。やっぱりMARUが弾くと、どんなアプローチでも僕らのサウンドになるんですよね。〈いい着地点が見つかったな〉っていう感覚がありました」
──“Foggy Night”も印象的な楽曲です。
PETAS「正直、いつ書いたのか全然思い出せなくて……(笑)。確か温泉か大浴場にいたときにメロが浮かび、携帯に録音していたのを後から聴いて、〈これ、いい曲だな〉と。アコギの弾き語りだけで完結させるのではなく、シンセポップっぽい雰囲気も入れようと。
発想の基点になったのは、アンダーソン・パークのリズムの感じですね。最終的には僕ららしいサウンドになりましたが、ビートは強めで、メロディは優しい、そんなバランスを意識して作りました。年末年始にかけてシンセの音作りを詰めて、ようやく完成した曲ですね」