シティポップ、ボカロ(ボーカロイド)、R&B、レゲエ……。よく耳にするあの音楽ジャンル名って、実際はどんな音楽を指しているの? そんな疑問に答え、音楽を一歩踏み込んで知ってもらうため、タワーレコードの音楽ガイドメディアMikikiが新連載〈音楽ジャンル再入門〉をスタートさせます。第1回は、初心者でもわかるシティポップ入門。背景情報や海外で人気が高い理由、代表的なアーティスト、名曲・人気曲などをしっかりと紹介。これを読めば、音楽を聴くことがもっと楽しくなるはず!


 

シティポップとは何か?

2010年代以降、海外を中心に始まったリバイバルと再評価によって改めて広まった〈シティポップ〉という音楽ジャンル名。しかし、シティポップとはどんな音楽なのか? ジャンルとして括るには指す範囲が広く、音楽的な特徴を説明しようとしても多様すぎる。

そのため、まずは〈おしゃれ〉〈都会的〉〈洗練されている〉〈軽やかな〉〈大人びている〉〈煌びやか〉といった抽象的で曖昧なイメージやムード、空気感を纏った音楽だという説明が最もわかりやすい。具体的に見ていこう。

シティポップというジャンル名はどんな音楽を指している?

より踏み込んで説明するなら、1970年代後半から1980年代に作られて流行した、洋楽から影響を受けたポップス。洗練されたコード進行と親しみやすいメロディ、落ち着いた心地よいグルーヴ(リズムのノリ)が、音楽的な特徴だ。アーティストは山下達郎、大貫妙子、竹内まりや、ユーミンこと松任谷由実(荒井由実)、大滝詠一、南佳孝、角松敏生といったシンガーソングライターが中心だが、プロの作編曲家、ティン・パン・アレーのようなバックバンドや腕利きの演奏陣といった裏方も重要な役割を担っており、卓越した演奏と高度な録音技術に裏打ちされている。

さらに、永井博や鈴木英人、わたせせいぞうなど、人気イラストレーターによるジャケットや歌詞が喚起する、〈都市〉〈夜〉〈夏〉〈海辺(ビーチ)〉〈プール〉〈リゾート〉〈ハイウェイ〉〈車〉〈恋愛〉のようなイメージも重要な要素。それらもあいまって、シティポップは、当時の若者たちのライフスタイルと結びついた生活やレジャーのBGM/サウンドトラックになった。

シティポップが生まれた経緯や背景

そんなシティポップが生まれた背景とは? 柴崎祐二の編著書「シティポップとは何か」を参照すると、欧米を凌ぐ高度経済成長による好景気、情報産業や第三次産業の発展、日本人の消費・購買力の増加、農村出身者の都市への流入や核家族化などが時代背景としてあった。その豊かで楽観的なムードは、確実に影響している。

また、海外の潮流の影響もあり、大滝詠一や山下達郎のようにスタジオでの完璧な音作りを追求するミュージシャンが増え、技術や機材の発展とともに、録音作品として洗練された曲やアルバムが増加した。テクニックを磨いた手練れのセッションミュージシャンが集中しているのもスタジオが存在するのも、東京を中心にした都市部。そのため、シティポップが都会の真ん中で生まれるのは必然だった。

シティポップが大きな影響を受けた音楽

シティポップが影響を受けた音楽は、明確に存在している。それは先述のとおり同時代の洋楽で、まずはボズ・スキャッグスらのAORが挙げられる。AORは、ソウルやフュージョンに影響されたロックを指す和製英語のジャンル。近年はヨットロックという呼称も有名だ。

さらに、アメリカ西海岸のロックやポップス、シンガーソングライターたちの音楽、ディスコやソウルミュージック、ブラックコンテンポラリーといった黒人音楽、ジャズ/フュージョンも大きな影響源だ。いずれもメロウさやスムーズさや洒脱さを伴った音楽で、シティポップの構成要素としてわかりやすい。

シティポップが現代に与えている影響

シティポップは、現代のシーンにもかなり影響を与えている。たとえば、アメリカのR&Bアーティスト、ザ・ウィークエンドが“Out Of Time”で亜蘭知子の“Midnight Pretenders”をサンプリングするなど、ヒップホップやR&Bシーンへの影響は大きい。

それだけでなく、Awesome City ClubやSuchmos、iri、TENDRE、離婚伝説、角野隼斗擁するPenthouseといった現行のJ-POPやインディアーティストも、〈ネオシティポップ〉と称されることが多い。近年、シティポップのカバーは多数リリースされており、韓国出身のDJ/プロデューサーNight Tempoによるダンスリミックスなどで現代の若者たちにも浸透している。実際に影響を受けているかどうかは様々だが、シティポップのサウンドやビジュアルは、レトロ回帰の風潮もあいまって定着しているのが事実だ。