(左から)中野武瑠、ON、南出大史、タイゾー

アーティストに限らず、目標を達成すると燃え尽きてしまう人は、少なくないだろう。しかし、石川県発のMaverick Momというバンドは、次から次へと新しい目標を見つけて、絶えず進化を続けている。

自分が愛する音楽への想いを貫きながらも、他者の好みにも寄り添い、彼らにしか作り出せない化学反応を模索。そればかりか、〈自分たちらしさ〉から一歩踏み出して、真剣にポピュラリティと向き合ってみせるのだ。時には自らの常識を疑ったり覆したりしながら、新たな挑戦を重ねていくピュアな探求心には、圧倒されざるをえない。

3rd EP『COMPASS』は、そんな彼らの軌跡を十分すぎるほどに感じる快作だ。3人のソングライターの個性を感じるばかりでなく、誠心誠意ポピュラリティと向き合った痕跡がまざまざと見える。これでもかというほどに個性を打ち出した2ndミニアルバム『unknown』と連ねて聴くと、変化は一目瞭然だろう。

誰も聴いたことのない音楽を生み出すためなら、変化だって恐れない。迷いながらも真っすぐに進んでいく、4人の想いに触れてほしい。

Maverick Mom 『COMPASS』 Maverick Mom(2025)

 

迷いと挑戦を経て辿り着いたMaverick Momらしさ

――前作リリースからの1年5ヶ月は、どのような期間でしたか。

南出大史(ボーカル/ギター)「長かったように感じます。今回のEPをリリースするにあたり、自分たちが何をしてきたかをメンバー間で共有する機会が多くて。何度も振り返ることで、頭でも体でも時間の経過を体感しました」

ON(ドラムス)「僕にとっては迷走してた時期かな。『COMPASS』をリリースするまでのシングル4曲で、毎回課題と向き合ってたというか。いろんな曲をリリースしたものの、内心は〈どうすればいいかわからん〉という感じでしんどかった。

ライブのアプローチも迷ってた時期で。〈サード・ファンファーレ〉が終わったあと、スタイルが確立したように感じてたんですけど、そのあとのライブで〈やっぱ違うかも〉と思ったこともありました」

※編集部注 2024年9月14日に東京・下北沢Flowers Loftで、9月15日に大阪・福島LIVE SQUARE 2nd LINEで開催された自主企画公演

タイゾー(ベース)「僕からするとその迷いは挑戦だったように感じてて。ライブ映像を観ながら、パフォーマンスをどうすべきかとかミーティングするようになったし」

中野武瑠(ギター)「今も別に完璧なわけじゃないけど、したいことややるべきことがハッキリして、ひとつの方向にギュッとなったのかなって。頑張れた期間やったと思います」

南出「これまでは〈Maverick Momらしさってなんだろう〉ということを、スタッフさんとあまり深く話してこなかったんです。ざっくりした共通認識が、ボヤッとあっただけというか。

でも、スタッフのかたから客観的な意見をもらうことで、自分たちがどう見られていて、お客さんの反応がどうかということを、自分たちなりに客観視して考えられるようになりました。それにより、メンバーの個性やルーツを活かすだけでなく、〈お客さんからこういう反応がほしい〉とか〈ライブでこういう演奏をしたい〉と考えるようになったんです。それが、いろんな物事に迷ったり挑戦したりといったことに繋がり、結果的に『COMPASS』がポピュラリティを重視したEPになったんだと思います。

話さずともできていたこともあったけど、言語化することで気づきも得られましたし、流動的でありながら収穫の多かった期間だったと思います」

――では、現時点の〈Maverick Momらしさ〉は、どのようなものでしょうか。

南出「作曲者ごとにテイストが変わったり、ひとりひとりにスポットが当たるアレンジになってたりするのが強みであり、Maverick Momらしさなんじゃないかな」

ON「大史が言ってくれたのは、バンドができたときからある一番の特徴だよね。今のMaverick Momは、もともと持っているらしさにキャッチーなメロディーやわかりやすいフレーズ、革新的な展開を取り入れて、いろんな人に届くバンドになりました」

タイゾー「お客さんと一丸となって楽しめるものを作り上げるのも僕ららしさだよね」

中野「本当に個性しかない。古いようで新しい曲も僕ららしさだと思うので、刺さってくれる人が増えたら嬉しいです」