ヨン・バルケの音楽は、編成が変わっても変わらないと思う。一本の線のような旋律が澱むことなくテーマを描き、即興的なダンスのように動き、やがて消えていく。しかしこの描写には大抵の音楽はそうじゃないかという危うさがある。ただ、このバルケのピアノとエレクトロニクスの音楽は、この印象を確かに裏付ける。ピアノソロが即興なのか、作曲されたものを演奏したのものなのかはわからない。ピアノの旋律に干渉するかのように揺れるエレクトロニクスのサウンドの波も、その発生因がどこにあるのか明示されていない。タイトルは〈書く〉というアイスランド語で、音楽は〈刻む〉という印象だ。
ヨン・バルケ(Jon Balke)『Skrif』ピアノの旋律と電子音の波がダンスのように動き、やがて消えていく危うさ
ジャンル
ジャズ